護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
なんとか呪いが解けないものか。
魔物の瘴気など比ではない。聖女の力でも払うのが難しいほどの、とても強力な力を感じた。
殿下が手を離そうとしなかったのは、本能が危険を察知して放すことを拒んでいたからだろうか。
──殿下は、どこでこんな呪いを……?
詳細を尋ねたいが、聞いたところで今のエリアナには、完全に呪いを解くことができないだろう。悔しいが、できないことには、深く関わらないほうが良いと思える。
──今の私には、へなちょこパワーしかないんだもの。
「軽減か。トーイ、完全に解ける可能性はないのか」
「……彼女の持つ加護の力が働いていると思われますので、記憶を取り戻して十分に力を出せば、呪いが消える可能性は十分にあるでしょう」
「……やはり皇族と同じ力を持っているというのか。報告を受けた時は、ありえないと思ったんだが……」
「殿下の守護獣でも打ち払えなかったことを考えると、さらに強い加護と言えるかもしれません」
──えっ、なんだか話が壮大なほうに進んでいる……!?
「わ、私には、そんな大層な力はございません!」
「いや、なんらかの力があるはずだ。守護獣は名づけをして契約をする。その名前さえ思い出せればいいのだが」
殿下は「思い出せ」と圧をかけてくる。自身の呪いがかかっているのだ、とんでもない迫力である。
「そう、おっしゃられましても……」
エリアナはだらだらと冷や汗をかいた。
──どうしよう、困ったわ。
「殿下は、いきなり五歳児の身体能力しかなくなり、大変なご苦労をされているのです。エリアナさま、どうかお助けください」
ハンカチを手にしたセブルスがよよっと泣く仕草をして、エリアナに頭を下げる。
「どうか、頭を上げて、さま呼びはおやめください」
「いいえ、殿下をお救いくださるお方なのですから。敬意を払うのは当然のことでございます」