護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
殿下はエリアナを見つめてふっと笑う。けれど目が笑っていないために、とても恐ろしい。エリアナはつい涙目になった。
──ううっ、同じ目でも、子どもの殿下はとってもかわいらしかったのに。
王国ではこんなに迫力のある人などいなかった。かの国の、守護は聖女に任せきりの人たちとは違って、常に先頭に立って魔物と対峙する立場にいるせいだろうか。
「これよりエリアナは俺の専属侍女とする。呪いが解けるまで、よろしく頼む」
変わらずに威厳を放っているけれど、真摯な意思が感じられる。
加護の力など感じないし、呪いを解く自信はないけれど、困っている人を放っておけないのがエリアナである。
ポジティブに考えれば、へなちょこパワーだろうと、回数を重ねれば効くかもしれないのだ。
「正直、私に殿下の呪いをとく力があるとは思えません……ですが、懸命に努めます」
エリアナを見つめる殿下の目がふと和らぐ。
心から安堵しているようなその変化から、このひと月間の心労がいかほどだったかを知った。
「だが、このことは決して口外するな。したら、二度と陽の光を見ることはないと思え」
空気だけで息の根を止められそうな、本日最大の気迫がエリアナを襲う。
ぶるぶる震えながら「はい」と答えるのが精いっぱいだ。
「今日はもう自由にしていい」と手を離され、ぼふんっと子どもになった殿下に執務室から出るよう促されたのだった。