護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
☆☆☆
エリアナが去った執務室で、ルードリックは疲れを感じて背もたれに体を預けた。
短時間のうちに呪いの増減を体験したために、思いのほか体に負担がかかっている。
呪いが発動して子どもになるとき、息苦しくて体がきしむように痛む。縮んだ後は体が重く、すべての感覚が鈍る。
それがエリアナと手をつなぐと元に戻るばかりか、体の中が清涼感で満たされる。それを感じた衝撃と感動はすさまじく、手を離すことができなかった。
あの力は必要で、なにがあっても彼女を手放してはならない。
だが、エリアナが怪しいのは変わらない。
──あの慌てた様子、なにかを隠している。
「ビクス」
ぼそっと名を口にすると、ローブを身にまとった者がシュタッと現れた。口元をマスクで隠してフードを深くかぶったまま、ルードリックの前で跪く。
「お呼びにより参上しました」
出された声はアルトの音域だ。
彼女は『影獅子』のメンバーのひとり。影獅子はその名の通り、影としてルードリックの護衛や諜報活動など、隠密の任務をこなす大公家の組織だ。
ルードリックはエリアナがスパイではないかと疑っていたため、城の侍女として雇い、ビクスには彼女の行動を監視させていた。
「報告してくれ」
「御意」
ビクスはここ一週間の様子を詳細に報告し始めた。
「早朝に起き、庭に設置されているガゼボの中で手を組み、しばらく佇んでいる。その姿は清らかに見え、白いガゼボがより白くなる気がいたします」
──なにかと交信してるのか? 怪しいな。
「食事は平民らしからぬ上品な所作ながらも、頬を緩めて夢中で食べています」
──口に合うのか。
「そのさまは、一緒に食す使用人たちに「エリアナはほんとうにおいしそうに食べるわね!」とほほえましく思われ、料理長には「うまそうに食べてもらえてうれしい!」と涙ながらに感謝されています」
──料理長を手中に収めるつもりか?
「休憩時間には庭に出て、笑顔で植物に何やら話しかけます。そしてなぜか小鳥などの小動物が集まってきてひとしきり戯れています」
──植物に話しかける? それに動物だと?
エリアナが去った執務室で、ルードリックは疲れを感じて背もたれに体を預けた。
短時間のうちに呪いの増減を体験したために、思いのほか体に負担がかかっている。
呪いが発動して子どもになるとき、息苦しくて体がきしむように痛む。縮んだ後は体が重く、すべての感覚が鈍る。
それがエリアナと手をつなぐと元に戻るばかりか、体の中が清涼感で満たされる。それを感じた衝撃と感動はすさまじく、手を離すことができなかった。
あの力は必要で、なにがあっても彼女を手放してはならない。
だが、エリアナが怪しいのは変わらない。
──あの慌てた様子、なにかを隠している。
「ビクス」
ぼそっと名を口にすると、ローブを身にまとった者がシュタッと現れた。口元をマスクで隠してフードを深くかぶったまま、ルードリックの前で跪く。
「お呼びにより参上しました」
出された声はアルトの音域だ。
彼女は『影獅子』のメンバーのひとり。影獅子はその名の通り、影としてルードリックの護衛や諜報活動など、隠密の任務をこなす大公家の組織だ。
ルードリックはエリアナがスパイではないかと疑っていたため、城の侍女として雇い、ビクスには彼女の行動を監視させていた。
「報告してくれ」
「御意」
ビクスはここ一週間の様子を詳細に報告し始めた。
「早朝に起き、庭に設置されているガゼボの中で手を組み、しばらく佇んでいる。その姿は清らかに見え、白いガゼボがより白くなる気がいたします」
──なにかと交信してるのか? 怪しいな。
「食事は平民らしからぬ上品な所作ながらも、頬を緩めて夢中で食べています」
──口に合うのか。
「そのさまは、一緒に食す使用人たちに「エリアナはほんとうにおいしそうに食べるわね!」とほほえましく思われ、料理長には「うまそうに食べてもらえてうれしい!」と涙ながらに感謝されています」
──料理長を手中に収めるつもりか?
「休憩時間には庭に出て、笑顔で植物に何やら話しかけます。そしてなぜか小鳥などの小動物が集まってきてひとしきり戯れています」
──植物に話しかける? それに動物だと?