護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 ──あぁ、やっぱり。すごく驚いていらっしゃる! そうよね、当然のとこよね。

 女性に興味がなさ過ぎて、数多な貴族令嬢との婚約もしていないルードリックが、ピンク髪の侍女の手を引いているのだ。
 刺さるような視線を浴び、エリアナはしくしくと泣きたい気持ちだ。

 サリナはルードリックと同じ金髪で先の大公妃にふさわしい威厳を持ち、青く澄んだ瞳で顔立ちがよく似ている。

「母上、ご無沙汰しております」

 ルードリックが敬う礼を取り、エリアナも片手でスカートを摘まんで敬意を払った。直後ルードリックがソファに座ったので、必然的にエリアナは隣に腰かける。

 針の筵とは、このことか。
 必死に微笑みを作るも、頬が引きつりそうになる。

「あなたが久しく顔を出さないものだから、こうして訪ねてまいりましたの」
「業務が立て込んでおりまして、申し訳ありません」
「そのわりに、大きな変化があったようですね?」

 険しい目がエリアナに向けられた。

「あなたが、侍女の手を握っているとは……」

 サリナの唇がプルプルと震えて、次の言葉が出てこないようだ。

 ──お気持ち、すごくわかります……でも、事情があるんです!

 叫びたいが、侍女のエリアナに発言権はない。

「まず、報告が遅れたことをお詫びします」

 ルードリックの謝罪に衝撃を受けたサリナはヨロッとして背もたれに背を預け、天を仰いで額に手を当てた。

「まあ、なんてことでしょう……」
「母上、実は」

 ルードリックが呼びかけると、サリナは「待ってちょうだい」と手のひらで制する。
 その後、でもあの息子が……これは喜ばしいこと? などとブツブツつぶやいているのが聞こえてくる。
 ふと姿勢を直し、まっすぐにルードリックを見た。

「恋愛するのは喜ばしいことで否定しませんが、結婚は別とお考えなさい」

 ──殿下、早く説明しましょう!
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