護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
目で訴えると、ルードリックは「ふぅ」と息を吐いた。
「いいえ、母上、違うのです。言葉で説明するよりも、実際にご覧になっていただきます。どうか、ショックを受けないでください」
「なんのことですの?」
サリナは怪訝そうな顔つきだ。
「いいですか。気をしっかりお持ちください」
ルードリックはすっとエリアナの手を離した。ぼふんっと黒い靄に包まれた彼が五歳児の姿になる。
「ひぃっ」
おつきの侍女たちが悲痛な声を上げた。
「……」
サリナの時が止まっている。
呼吸も止まっていそうで、エリアナはハラハラと見つめた。
「申し訳ありません。この身に、さらなる呪いを受けてしまいました」
サリナはよろめき、ばったりと座面に倒れこんでしまった。
「サリナさま!」
「大奥さま!」
ヒルダとおつきの侍女たちが慌てふためき、冷たい布を額に当てるなど、ひとしきりの騒動となる。
ルードリックは五歳児の姿のまま、ソファに横になっているサリナの手を握った。
「すみません、母上……」
ルードリックの声は悲しげだ。
「再び、あなたの小さな手を握る機会を得るとは、思っていませんでした」
サリナは起き上がり、やさしい目をルードリックに向ける。
「それで、彼女がそばにいるということなのですね」
聡明なサリナは詳細の説明なくとも、すぐに事情を呑み込んだようだった。エリアナに向ける目が感謝に変わっている。
言葉をかけられることはなかったが、エリアナは微笑みを返して無言のまま頭を下げた。
「ルード、こちらにいらっしゃい」
ルードリックは招かれるまま、サリナの隣にちょこんと座った。
「それで、母上。呪いは完全に解けていませんが、いつか必ず解いてみせます。彼女が手伝ってくれますから」
五歳児のかわいらしい声と口調が、サリナとおつきの侍女たちのハートを射抜いているのが見て取れる。