護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「そうですね。期待してるわ。それよりルード、お菓子をお食べなさいな。イチゴタルト、すきでしょう?」
ルードリックは一瞬カチンと固まったものの、サリナのすすめを断れないようだ。しぶしぶながらもお菓子を受け取っている。
ルードリックは子ども扱いをされることに抵抗があるのだろう。子どもサイズの家具をそろえるという話も固辞しているとセブルスが嘆いていたのだから。
小さな手でお菓子をもって、あむあむと頬張るルードリック。
──なんっっって、かわいいのっ。
本人は決して認めないだろうけれど、五歳児ルードリックは天使級の愛らしさがある。
お菓子をすすめたサリナに心の中で拍手をして大絶賛し、小さな口をもぐもぐするルードリックを見つめた。
「あらあら、ルード、ほっぺについてますよ」
ハンカチを手にしてにこにこしているサリナは、完全に五歳児の母親の顔に戻っている。
ルードリックの生意気な雰囲気も影を潜めていて、向かい側のソファ周りはほっこりしたムードが漂った。
──あぁ、癒される……。
親子とはこういう雰囲気なのだ。
孤児で神殿育ちのエリアナが知らなかった世界である。自分もいつか親になることができたら、サリナのように接したいと思う。
胸が温かくなってほくほくしているエリアナの視界に、もふっと、ちび獅子のしっぽが入った。
──あら、あなたもついてきてしまったの?
執務室以外で姿を現すのは珍しい。
「母上、あと、もうひとつ。ナギュルスが眠りについてしまいました。俺のせいです」
ちび獅子がぴくっと反応を示した。赤い目に光が宿ったようにも見える。フワフワパタパタと向かい側に飛んでいく。
「まあ、そんなことが……まさか守護獣が卵に戻ってしまうなんて……」
──えっ!?
守護獣が卵に戻ったことは初耳であり、衝撃の事実だ。現在ルードリックは加護の力を使えない状態ということだ。