護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
ならば領地の安全が脅かされるのではないか。
深刻そうに守護獣の話をする彼らの頭上で、ちび獅子が右往左往し始めた。
まるでなにかを伝えたいように。
──あ……もしかして?
確信はない。
それに自分が発言をしていいのか迷うし、仮にちび獅子がそうだとして、彼らが安心できるような材料はなにも持っていない。
エリアナだけに見えるちび獅子が、そこにいるというだけだ。
──伝えるべきことがしっかりとわかるまで、なにも言うべきじゃないかも。
しかも契約もしていないエリアナだけが見えるなんて、ルードリックにとっては衝撃に違いない。
今までも相当のショックを受けてきているのだ。曖昧なことで新たな衝撃を加えてしまうのは非道ではないだろうか。
──ん~、でも希望は持ってみても……。
うつむいて悶々と悩んでいると、ルードリックがひょこっと顔をのぞかせた。
「エリアナ?」
「きゃっ」
驚いて飛びのいてしまった。バクバクする胸を押さえる。
「で、殿下。お話はお済みですか」
「ああ、一緒に来てもらったのに放置してすまない」
──あ……。
意外だった。
まさか謝罪の言葉を向けられるとは。
「いえ、とんでもございません」
ルードリックはエリアナに手を差し出すので、そっと重ねた。そうすればふわっと体が大きくなり、大公殿下に戻る。
ほぅ……という、感動と安堵の声が上がった。
「まことに不思議なこと。エリアナ、これからもルードリックを助けてちょうだい。わたくしからもお願いするわ。困ったことがあったら遠慮なく相談してね」
「ありがとうございます。その時はぜひ、お願いいたします」
「それでは、ルード。また来るわね」
サリナは毅然としながらも優しい言葉を残し、離れへ帰った。
──ふぅ……嵐が過ぎ去ったみたい……。
「父上にも話をされるんだろうな」