護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「スルバス、ご苦労だった」
「はっ、スルバス以下黒獅子騎士団員百名! 総員ただいま討伐より帰城いたしました!」
一斉にザッとひざまずき、ルードリックに敬意を示した。
「みなもご苦労だった。ツキノワームが群れで出現したと聞いている。不測の事態と守護獣不在の中で、よく闘ってくれた。感謝している。これでしばらくは領地の安全が脅かされることはないだろう」
ねぎらいの言葉で団員たちの表情が誇らしげにキラキラと輝き、キリッと引き締まる。
彼らの心が沸き立っているムードを感じながら、エリアナはふと小さな違和を覚えた。
──なんだか悪いものがあるような……?
スルバスがルードリックに話しかけ、わいわいとにぎやかに話す騎士たちの声も耳に入ってこない。
気にするとどんどん悪寒が強くなっていく。
黒い気配。ルードリックの呪いの靄とは違うなにか。だけど強力な物。それは騎士たちからではなく、違う場所から感じる。
──まずいわ。殿下に伝えなくちゃ。
エリアナはルードリックの手をきゅっと引き、声を潜めた。
「殿下、騎士団の荷物の中に悪いものが混じっています」
ルードリックの肩がぴくっと動く。
「それはほんとうか?」
「はい。悪い気を放っているものがあります。人に害を与えてしまうほどの」
伝えた瞬間、ルードリックから緊迫感が伝わってきた。
「トーイ」
凛とした呼び声に反応したトーイがすぐさま応える。
「はっ」
「荷の中に不穏なものがあるようだ」
さわがしかった話し声がぴたりとやんだ。
「……荷の中に、ですか?」
スルバスが戸惑っている。