護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
エリアナの頭上にいるちび獅子はイカ耳になってしっぽが毛羽立ち、「エリアナ!」と叫んだルードリックの腕に庇われた。大きなマントがエリアナの視界を覆う。
「トーイ気をつけろ。俺でも、このまがまがしさがわかる」
「申し訳ありません。……では、エリアナ、ふたを開けますよ」
トーイが慎重に箱を開け、エリアナはルードリックの腕に庇われながらも中を見た。
人形や壺、アクセサリーなど、雑多な黒い気を放つ呪物がたくさん入っている。アクセサリーは鈍い光を放ち、本来ならば可愛いはずの人形の微笑みが悪魔のようである。
「エリアナ、解呪できますか?」
トーイがニッと笑う。
「私が?」
──できるのかしら?
聖女だったころも呪物の解呪はしたことがない。
「あなたなら、できると思いますよ」
エリアナを見つめるトーイは微笑みを崩していない。それも帝国一の魔術師にふさわしいというべき、とっても自信ありげな顔で……。
──あれ? トーイさんの顔を見ていたら、なんだかできるような気がしてきちゃったよ?
「わかりました。私、やってみます!」
決意を込めてぐっと拳を握ると、ルードリックによる腕の囲いが消えた。
「……解呪するなら手を離したほうがいいな。ここにいる者はみんなこの呪いを知っているから、姿が変わっても平気だ」
そういってスッと手を離した。
たちまち五歳児になってしまい、大きなマントの中に埋まって少しもがいている。ブローチのついていないマントには魔道具が効かないようだ。
「殿下、大丈夫ですか!」
そばにいた騎士が慌ててマントを取り、ルードリックはスルバスに抱っこをせがむように腕を伸ばした。
「スルバス、頼む」
「御意。殿下、失礼いたします」
ルードリックを抱き上げるスルバスの顔がデレっとしている。舌足らずの可愛らしい五歳児のルードリックの破壊力は、シリアスな空気も和ませてしまうのだ。