護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 エリアナはルードリックの専属侍女に過ぎないのに、なぜこのような事態になったのか。

 きっかけは呪物解呪の様子を見ていた騎士からの相談だった。
 あのときパートナーになってほしいと跪いた彼の名はマクス・コール。現在二十歳のコール伯爵家の次男だといった。

 突拍子もない申し出のわりに深刻な表情だったため、場所を騎士団詰所の応接室に移して話を聞くと、コール伯爵が後妻を迎えてから邸内の様子がおかしくなったということだった。

 マクスは騎士団寮に住んでいるため実家の様子を知ることはなかったのだが、討伐前に兄からの手紙で相談をされたという。

『兄の話では父上のご様子が変だというんです。聡明だったのに、たまに心が虚ろになるような状態で、継母の言いなりになっていると。行っている事業も継母が主導していて、まるで家長のようにふるまっている。兄が父上の病を疑うも診療は必要ないと突っぱねられ、それどころかすべてを継母に任せるとまでおっしゃるそうで……』

 エリアナが解呪する様子を見て、伯爵の様子がおかしいのは呪物のせいではないかと思い至り、隙を見て確認してほしいというのだった。

 現在のコール伯爵家は、マクスの実父、二十三歳の実兄、継母とその連れ子である妹・十六歳が暮らしている。
 二週間後に妹のデビュタントとして、十六歳の誕生パーティが盛大に開かれるとのことだった。

『話を聞くに、洗脳系の呪いが考えられますね。エリアナの力を試すのにいい機会ですから、パーティには私が一緒に行きますよ』

 そう言ったトーイの同行は、マクスに『継母は魔術師を敬遠しています』と断られ、ますます呪物の存在が疑われることとなった。

『そういえば、コール伯爵家から招待状がきていたか?』

 無視していた招待状の存在を思い出したルードリックが『俺がエリアナとともに行く』と言い出し、一同が驚いたのだった。

 大公殿下のパートナーともなれば、ドレスもマナーもダンスも必須である。急遽サリナに助力を願ったというわけだ。
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