護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
呪物探しのミッションだけでなく、大公殿下のパートナーという重責。
エリアナが今までに出席したパーティは王太子との婚約式のみだ。
そのときでさえ聖女らしく清貧に振舞うことを要求されたので、ドレスなど着ることなく神殿服だった。
さらに王太子妃になる身だったというのに、公の場でダンスを踊ったことがない。神官長曰く、聖女はしとやかに微笑み、なにもせずに椅子に座っているべきとのことで、妃教育でレッスンを受けただけである。
そういえば講師の足を踏んでばかりだったと思い出し、ガーンとして青ざめた。
──大変だわ! 殿下に迷惑かけちゃう!
いまさらながらに事の重大さを実感してきて、冷や汗がたらりと流れる。
エリアナが回想しつつ立場の急変におののき震えている間にも、ドレスのデザインはもちろん小物と靴まで決まっていた。
「あとは……大公殿下のご衣裳はどうなされますか? パーティにご出席されるのは数年ぶりでございましょう?」
「そうね、エリアナとドレスコードを合わせなくては。ルードの衣装はホワイトを基調にして、ポイントに淡いクリーム色を取り入れてちょうだい」
そういってサリナはデザイン画を指して指示している。
「素晴らしいですわ! ベストパートナーとして注目を浴びることまちがいありません!」
サリナとデザイナーからうきうきした気持ちが伝わってくる。
「それではさっそく仕立てに入ります」
ほくほく顔のデザイナーが退室し、エリアナは用意されたお茶を飲んで一息ついた。
──ふぅ、終わった……。ドレスを着るのって、大変なのね……。
といってもまだ最大の試練は残っている。
ダンス……。
エリアナにとって、あれほど運動機能の鈍さを痛感できるものはない。