護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「ルードの呪い軽減の仕事もあるのに、忙しい思いをさせてごめんなさいね。社交にいっさい興味を持たなかったあの子が、急にパーティに行くというなんて」
「殿下が出席されるのは数年ぶりと仰ってましたね」
──はっ、ひょっとして、ダンスが苦手だからなのでは?
エリアナの顔がぱあぁっと輝く。
それならば、パーティで踊ることもないではないか。しかも今回は呪物探しという明確な目的がある。
──そうよ! きっとダンスを踊ってる場合じゃないもの!
密かな期待に胸が躍った。
「正確には二年ぶりね。将軍に就任したときのパーティ以来よ。あのときだってかたくなに必要ないっていうのを、陛下に命令していただいて強行させたくらいだもの」
サリナは当時を思い出したのだろう、片頬を支えて小さく息をついた。
「主賓だから出席はしたのだけど、貴族がたが挨拶にきても怖いオーラを出して短い会話で切り上げてばかり。ご令嬢がたとは目も合わせなかったわ。ほんとに困った子なのよ」
──殿下。ほんとうに人づきあいが苦手なのね。
「親のわたくしが言うのもなんだけれど、ルードは容姿も才も飛びぬけていて極上の花婿候補よ。ダンスだってうっとりするほど上手なのに、社交でそれを発揮しないのはひどくもったいないと思わない?」
「そ……そうですね」
──ダンスが上手だなんて……。
ダンス回避の目論見は外れかけている。
「おかげでダンスが踊れないんじゃないかって、失礼なうわさまであるのよ。そんなルードが自分からパーティに行くというなんて……わたくし、すごくうれしいの。エリアナのおかげね、ありがとう」
「いえ、私はなにもしていませんので」
サリナに手を握られて動揺するエリアナに、サリナはふわっと微笑みを向ける。
「そんなことはないわ。ルードが〝人には任せられなかった〟のだから」