護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 別人になってしまったということは、これから迷わず第二の人生を歩んでいけばいいということだ。

 今までできなかったことを一つずつやっていきたい。
 自由な外出、買い物、お祭り、食べ歩き。友人を作り、できれば胸を焦がすような恋もしたい!

 今までは同年代の人たちと交流することもままならなかった。
 出会いがなければ、恋もできない。王太子とは婚約関係だったが、王家と聖女のつながりを強めるための政略的なものだった。外見は美しいが傲慢な彼には恋心など芽生えなかった。

 ズルイータ公爵令嬢はもともと婚約者候補だった人で、王太子に恋をしているらしい。どうしても妃になりたくて、公爵と一緒に国王にかけあったが、『王太子には聖女が必要だ』と、すっぱり退けられたと城の侍女たちから聞いたことがある。
 諦められないほど、王太子のどこが好きなのかまったく理解できない。

 でも。

 エリアナは手を組み、感謝を込めて天を仰いだ。
 イジワルされたこともあるし、どうやって体を入れ替えたのかは不明だが、窮屈な生活を代わってくれるなんてエリアナにとっては女神のような人である。

「今まで、高飛車でひどい人、なんて思っててごめんなさい」

 それはさておき、第二の人生を歩むには隣国に入ったほうがいいと思える。
 隣国に行くには瘴気にまみれた死の森を越えるしかないが、果たして無事に抜けられるだろうか。

 死の森とは、魔物が巣くい、瘴気に満ちた樹海ともいえる場所だ。奥深くにある魔の穴から瘴気が出ているといわれ、力のない者が入れば五分ほどで呼吸が困難になり、やがて死に至る。

 王国は、ぐるりと死の森に囲まれている。国外追放は体のいい死刑宣告なのだ。

 容易に越えられないこの森があるおかげで、ナンザイ王国は他国から侵略されることがない。魔物と瘴気で疲弊するリスクを負ってまで王国を攻めようとはしないからだ。
< 6 / 134 >

この作品をシェア

pagetop