護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「なにが起こっても俺が守るから、心配するな」
そう言ったルードリックの顔はいつも通りだけれど、きゅっと握られた手からは執務室で感じるのと同じ気遣いが伝わってきた。
──そうよ。恐れることはないわ。
エリアナのそばには強力な味方、雷撃の大公と恐れられる殿下がいるのだから。
「はい、頼りにしてます」
大公は皇族。領地内とはいえ、大公殿下の移動ともなれば黒獅子の護衛がつく。トーイは護衛の中に混じっているはずだ。
騎馬の護衛騎士を引き連れた大公家の紋章を掲げた黒塗りの馬車は、コール伯爵邸のロータリーに着くまで一度も止まることがなかった。
大公家の馬車の到着に伯爵邸の使用人たちが慌てふためき、降り立った大公がパートナーを連れていることにも驚いている。
壮年の男性が急ぎ駆け寄り、ルードリックに敬意を表する。
「大公殿下、ようこそいらっしゃいました。ホールまでご案内いたします」
ルードリックのエスコートを受けるエリアナは社交の場で手をつなぐわけにはいかず、腕を絡めるようにして手首をつかんでいる状態だ。なんとかこの状態を維持し続けなければならない。
夕刻から始まっているパーティには多くの招待客がいて、ふたりは最後の入場となるらしい。
「ルードリック・セオ・アルディナル大公殿下のご入場です!」
さっと会場の扉が開かれた。