護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「……大公殿下? なぜこちらに? マクスは騎士団にいるんじゃなかったか? 私はここでなにをしていたのだ?」
「父上!! よかった!」
マクスと兄が伯爵のもとに駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「体はなんともありませんか!?」
兄弟の問いかけに伯爵はきょとんとしている。呪いの影響を受けていた時の記憶はないようだ。
「なんのことだ? とても清々しい気分で、体が軽いくらいだが?」
マクス兄から事の経緯の説明を受け、伯爵は衝撃を隠せずにいる。
「継母は勝手に事業を拡大して借金も作っています。自分や妹のドレスもアクセサリーも贅沢に購入していて、私の言うことなど聞いてくれません。すみません、私にもっと力があれば……」
マクス兄が悔しそうにうつむいた。
「妻が……私を……事業を……なんてことだ」
伯爵は頭を抱えてしまった。
「伯爵さま、事業はともかく呪物については、まだ夫人の仕業だと断定してはいません。証拠が必要です」
エリアナの言葉に、伯爵はハッとして顔を上げた。
「ありがとう。あなたが私の呪いを解いてくれたのだな。殿下、見苦しいところをお見せして申し訳ございません」
立ち上がって真摯に頭を下げたあとは、凛とした顔をしていた。本来の聡明なコール伯爵の姿だろう。
マクス兄弟も引き締まった顔つきになった。
「まずは呪物を探し、エリアナの解呪を受けることが先決だ」
「あ、それでしたら。まずはこちらに来ていただけますか。呪物は置物や宝飾品が多いと伺って、継母が来てから増えたと思われるものをこっそり集めたんです。どれも父上の身近にあったものです」
マクス兄の案内で別室に移動し、台にかぶせてある布が取り払われた。
花瓶やブローチ、羽ペンもあるが……。
「殿下、ここに呪物はありません」