護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!


 小屋の中の深刻さとは裏腹に、パーティ会場では招待客たちが華やかにダンスや会話を楽しんでいる。

 伯爵夫人はご夫人がたに囲まれていた。

「ご夫人、どうしたら大公殿下にご出席いただけますの? なにか秘策がおありなのでしょう?」

 青いドレスの夫人が扇で口元を隠しつつジトっとした眼差しで問いかけ、その隣の赤いドレスの夫人も同様に口を開いた。

「わが娘のデビュタントにも招待状をお送りしたのに叶いませんでしたの。秘策があるならぜひお伺いしたいわ」

 特別なにもしていない伯爵夫人は答えに詰まった。

 ほんとうに、なぜ来たのだろうかと考える。
 社交場での噂に聞いていた通り数か月も前に送った招待状には返事すらなく、当然出席されることはないだろうと思っていたのだ。

 しかし理由は何であれ、大公殿下のパーティ参加は名誉なことである。
 それがデビュタントともなれば、主役の令息令嬢の社交界でのランクは高位になり、さまざまな催しに引っ張りだこになる。

 もちろん縁談も有利になる。最愛の娘、イラーネの未来は約束されたのも同然だ。
< 68 / 134 >

この作品をシェア

pagetop