護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
そんな恐ろしい死の森だが、少しでも力が使えれば防御幕を張って身を守ることくらいはできるだろう。
問題は、この体に力があるかどうかと、森を抜けるまで持つかどうかだ。
エリアナは跪いて手を組み、祈った。
──神よ。アクエラさま。私に森を渡る力をお与えください。
この場所は神とつながる神殿ではないから、力を与えられることは不可能だろう。けれど、祈らずにはいられない。
「どうか、お願い」
髪の先から足のつま先まで慎重に力を探ると、微量ながらも力の流れを感じることができた。
汗をかきながら集中して手のひらに力を集める。
「できた!」
……が、力の玉は小さく、今にも消えてしまいそうだ。
「なにこれ、しょぼすぎる……」
エリアナはがっくりとうなだれた。
今までは力が身の内に溢れ、少し考えるだけで聖なる力を自在に操ることができたのだから、喪失感が半端じゃない。
それでも、なんとしても、これで身を守らなければならない。
「だって、生きるためには、ここを越えるしかないのだから」
エリアナは死の森を見つめて息をのんだ。
闇のごとくに暗い森の中で、さらに黒い靄のような瘴気が濃く漂っているのが目に見える。
「怖い……」
それでも、今は勇気をもって進むしかない。
エリアナは聖なる光が体を覆うイメージを浮かべて防護膜を張り、恐る恐る森へ入った。