護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「その、隠していたことなんですけど、記憶喪失じゃないんです。ほんとに覚えていないこともあるんですけど、自分が何者かは覚えていて……実は私、ナンザイ王国の聖女だったんです」
「ということは、解呪も聖女の力なのですね?」
トーイがそう思うのも当然だが。
「違うんです。聖女としての力はないんです。この体は、本来の私のものではありませんので」
「待ってくれ。体がエリアナではない? どういうことだ?」
ルードリックは額に手をやり、戸惑いを隠せないようだ。セブルスもトーイまでもが困惑している。
当然の反応に苦笑しながら、突然に魂が入れ替わっていて、自分の体に入った何者か──おそらくこの体の持ち主と王太子殿下に、断罪されて国から追放されてしまったことを明かした。
「なんてことでしょう!」
セブルスが悲痛な声をあげ、ルードリックは考え込むように顎をさすった。
「魂の入れ替えか……トーイならば可能か?」
トーイは顔をゆがめて首を横に振った。
「できません。とんでもないことです。私ほどの魔力を持つ呪術師でも不可能でしょう。人外の者……ドラゴン級の力……ダークエルフなら可能かもしれませんが」
「人外の力か。俺の子ども化の呪い……大公家が抱える失明の呪いと同等ということか」
「失明? 殿下は色が見えないだけではないのですか?」
「ああ、エリアナには詳しく話してなかったな……大公家の呪いは二代目がドラゴンを討伐したときに受けたもので、未来永劫に受け継がれていくんだ」
断末魔の中魔力を振り絞った呪いは強力で、これまでに誰にも解くことができなかった。
『この先大公家に生まれる子は直系の男子ひとりのみ。その目は色を映さず、いずれは光を失うだろう』
ならば先の大公殿下が隠居したのは病気ではなく呪いのせいなのだ。
「それでは、殿下もいずれ……」