護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
エリアナの膝の上にはちび獅子がいて、ルードリックをじっと見つめている。自分のことを話しているとわかるのだ。
エリアナに懐いているちび獅子のことを伝えたいが、色の見えない殿下に特徴を説明するのは難しい。
──赤い目といってもわからないわよね。どうすれば?
「あの、殿下。守護獣は獅子なんですよね? 大公家の紋章にあるような。それっぽくて小さな子がいるんですけど」
「……どこに?」
「私の、膝です」
「……!?」
ルードリックがエリアナの膝をまじまじと見つめ、青灰色の目には疑問符が浮かんだ。
「なにも見えないが」
「……ですよね。でもいるんです。精霊だと思ってたんですけど」
「ふむ、私にも見えません。なぜエリアナさまだけ見えるのでしょうか」
トーイが興味深そうにエリアナの膝を凝視する。
「エリアナさまに呪物がわかる原理と同じでしょうか」
セブルスまでも膝を見つめた。
三人の男性がひたすらにエリアナの膝を見ている。
──待って。この構図は……なんか、恥ずかしい……!!
「あ、あの?」
顔を真っ赤に染めてあわあわとたじろぐエリアナにかまわず、トーイは目線を膝に合わせる体勢を取り、じっくりと眺めている。
「うむ、こうしてみると、なんとなくエネルギーのようなものが……」
「トーイ、セブルス」
ずもももも……とルードリックから怒りの気が放たれ、慌ててふたりは膝から目を離した。
「大変申し訳ございません。嫁入り前の乙女の膝を凝視するなど……」
セブルスは苦笑いし、トーイは
「つい、研究熱心なもので」と悪びれる。
「俺には見えないが、ナギはいつも近くにいてくれるんだな」
そういうルードリックは嬉しそうでもあり悲しそうでもあった。
「はい、いつも殿下を気にしてらっしゃいます」