護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 ルードリックが悪魔的な顔をしている。

「俺はきみの解呪の力を求めているが、決してかの国のような扱いはしない。この国の者はみなきみに敬意を持つだろう。そうしない者は俺が許さない」
「……っ」

 三人が自分のことで怒っている。胸がジーンと熱くなり、エリアナはうつむいた。

「エリアナ?」

 ルードリックとつないでいる手がきゅっと握られる。

「ありがとうございます。こんなふうに怒っていただけるのは初めてで、うれしくて」

 エリアナの力を求められるのは同じだけれど、環境が全く違う。

「死の森を越えて、みなさんと出会えてよかった」

 ポロっと涙が零れ落ちて、慌てて指で目を押さえた。

「すみません、泣くつもりなんてないのに」
「……今までよく頑張ってきたな。これからは帝国の民として幸せになればいい。アルディナルは心からエリアナを歓迎する、王国のことなど忘れさせてやる」

 ルードリックに頭を撫でられ、エリアナの涙腺はますます緩む。

 ──殿下のおそばでなら、解呪師になってもやっていけるかもしれない。

「だからもう泣くな」

 ルードリックはポケットからハンカチを出し、涙が止まらないエリアナの頬をせっせとやさしく拭った。

「殿下、ありがとうございます」
「自由を求めるエリアナの気持ちはよくわかった。解呪師になるのは、陛下とお会いしてから決めてもかまわない。でも帝国の民になるには陛下の承認がいるんだ」

 どのみち皇都に行く必要があるのだ。

「はい、私、陛下にお会いします」

 申請に際して聖女だったことも魂が入れ替わったことも陛下に話してよいか聞かれ、エリアナは承諾した。

「それでは殿下、皇都行きの話を進めてまいります」

 そう言い残し、トーイはスッと姿を消した。


 
< 82 / 134 >

この作品をシェア

pagetop