護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

「嫁としてお考えなさいということよ」
「なっ、なにをおっしゃるのですか!?」

 ルードリックの顔が真っ赤に染まった。

「あなたが好意をもっていることはわかってますのよ。それに、もしも完全に呪いが解けなくても、エリアナさんとなら後継者をもうけることができるでしょう」

 サリナは真剣だ。

「母上、彼女をそんな目で見たことはありません」

 ──俺は、自分の子どもに呪いを受け継がせたくない。

「彼女は自由を望んでいますから」
「そう……でもこれだけは覚えておいて。わたくしは、エリアナさんを気に入ってますのよ」

 サリナとの話を終え、再びスルバスの抱っこで移動して馬車に乗り本城へと戻る。

 ──結婚。

 サリナの言った通り、後継者を作ることはルードリックの責務だ。

 だがドラゴンの呪いのせいで色が見えない人生は、至極つまらなくて理不尽な感情を抱えて生きていくことになる。
 色で目印をつけたものや区別されたものはわからず、色鮮やかな絵画や美しいと称えられる容姿はどれも同じに見える。
 色の見えないことを感じるたびに襲ってくる孤独と疎外感。

 モノクロの世界から脱したいと思ったことは数知れない。加えていつか失明するという恐怖。そんな思いを自分の子に味わわせたくない。
 だから後継者は養子を迎えようと考えているのだ。直系でなければドラゴンの呪いも終わるだろう。

 エリアナの解呪に過度な期待は抱かない。負担を強いたくはないからだ。

 馬車が到着すると、知らせをきいたエリアナが駆け寄ってきた。

「殿下! サリナさまへの報告はお済みですか」

 笑顔の彼女の瞳はどんな色だろうかと、決して知ることは叶わないことを考えながら「ああ」と答えた。
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