護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
三章 皇都はにぎやかです
守護獣スサノーン
アルディナル大公領を出発して四日。エリアナたちは皇都に到着した。
「わあ、すごい!」
エリアナは目を輝かせて馬車の窓から身を乗り出した。
道の両側に建ち並ぶ商店、民の憩いの場にある噴水、立派な時計塔、どれもが目に新しくてエリアナの胸がわくわくと躍る。
これまでに通り過ぎた町はどこも綺麗だったけれど、皇都の比ではない。
──ゴミ一つ落ちてないのもすごいわ。
「エリアナさま、あまり窓から顔を出さないでください」
わきを進む騎馬のマクスから注意を受け、エリアナは慌てて引っ込めた。
「ごめんなさい、つい興奮して」
「いえ、身を乗り出すと危険ですから。お気を付けください」
マクスは微笑みを見せるけれど、目は厳しいままで周囲の警戒を緩めない。
皇都行きが決まり、十名の護衛を選任する際、マクスは「俺がエリアナさまをお守りします!」と志願したとスルバスから聞いている。
「エリアナさまのことを必ずお守りするよう、父と兄からきつく申しつかっております。何事が起きても、この命に代えてお守りします」
出発前にそう宣言したマクスは、道中常にエリアナの目に届く範囲にいる。
コール伯爵を救った件で多大な感謝をされ、マクスからは騎士の誓いを懇願されるほどの熱い忠誠心をもらっている。
コール伯爵も同様で、アルディナル城に大量の贈り物と一緒に訪れた伯爵から養女の申し出を受けたのだった。
「身分が定まっていらっしゃらないなら、ぜひ、わが娘に!」と。
思ってもみなかった申し出に「はわわ……」と戸惑い、「ありがたいお話ですけど」と丁重に断ると「では、どなたともご婚約されていないのでしたら」と小伯爵との婚約を申し込まれてしまった。
第二の人生を歩み始めてから結婚なんて考えたこともない。
困惑していると、それまで終始無言だったルードリックが発言したのだった。
「伯爵家は事業を立て直すのが先だろう。彼女は俺の大切な侍女なのだ。不安定な環境に身を置かせることはできない」