護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
夫人のせいで混乱した家門を整理してから出直してこいと、容赦なく突っぱねてくれたのだった。
エリアナは向かい側にちょこんと座るルードリックに微笑みかけた。
「なにを笑ってるんだ?」
むすっとしている顔もかわいらしい。
本人の希望で移動中はずっと幼児姿のままだ。
終始手をつないでいるのは難しいうえに、大公殿下として移動すると面倒なこと(主に令嬢を妃にアピール)がおきるから、嫌らしい。
実際大公家の馬車列を発見した貴族らから邸宅への宿泊を熱望され、大公殿下が同乗されていないと知るとあからさまにがっかりして対応が軽くなった。
──ほんとに興味がないというか、女性が苦手なのよね?
サリナの困り顔が目に浮かぶが、こればかりは本人の気持ち次第だ。婚約という縛りを得たくない者同士、通じるものがある。
──でも、いつかは殿下も結婚されるんだろうな。
サリナのようにしっかりした令嬢と結ばれて大公領を守るのだ。ルードリックが婚約を考える、それまでには子ども化の呪いを解かなければならない。
できれば、失明の呪いも。
「皇都に連れてきてくださってありがとうございます」
「きみは俺の……大公家にとって重要な人だから、当然だ」
照れたようにプイっとそっぽを向いてしまった。
「あっ、殿下、見てください。あのお店、たくさんの人が並んでますよ! なにを売ってるんでしょう」
ずらっと行列を作っている店がある。まだ一度も町に出かけたことがないエリアナは興味津々だ。
「大変です! 殿下、季節限定スイーツの文字が見えます! 限定ですって!」
キランと目を光らせると、ルードリックはぷっと噴き出した。
「そうだな。陛下との謁見が終わったらあの店に行ってみようか」
「ほんとですか!?」
初めてもらったお給金も使わないままで、今回の旅に持ってきている。