護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「しばらく皇宮に滞在するだろうから、町を一巡りする暇はたっぷりある」
「はい。楽しみにしています」
とうとうお給金を使える機会ができる。
ニヨニヨして目をキラキラと輝かせた。
そんなエリアナをルードリックはまぶしそうに見た。
「もうすぐ皇宮が見えてくるぞ」
前方に、白く美しい建物が姿を現した。
「わあ、あれが……!」
エリアナはぽかんと見上げた。
──え、すごい……圧倒的な美、美、美!
白亜の壁に金の装飾が陽の光できらびやかに輝いている。
そしてすごく広い。
正門から入ったのに、いつまでたっても宮殿に近づかず、庭も建物もアルディナル城の二倍はあるだろう。ひとりで出歩いたら迷子になる自信がある。
「殿下、一応の確認なのですけど、ずっとそのお姿でよろしいのですか?」
「かまわない。皇宮内で常に手をつないでるわけにはいかないだろう。それならば終始子どものままがいい」
馬車止まりに着いた大公家の馬車を遠巻きに眺めている令嬢たちの姿がある。
ざっと見た感じ十名以上はいる。みんな素敵なドレスをきていることから、相当の家門の令嬢だろうと思える。
マクスが馬車のドアを開けると、彼女らの話し声が届いてきた。
「見て。アルディナル大公殿下の馬車よ」
「今日登城されるって話は本当だったのね」
「恐ろしいってうわさだけれど、たいへん美しいお方とも聞いたわ」
「どんなお方かしら」
などと華やいでいて、麗しの大公殿下待ちなのがはっきりと伝わってきた。
──ごめんなさい、只今殿下は幼児なのです。
エリアナは苦笑しつつ、ドアの横で控えているマクスの手を借りて降りる。
ついで幼児ルードリックがぴょんっと元気に飛び降りた。そしてすぐにマクスに抱っこをせがむ。ニッと笑って不敵な表情をしてマクスをおののかせているが、遠目から見れば完璧な幼児ぶりだ。