護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「まあ、なんてかわいらしい子なの」
「あら? 殿下がお見えにならないわね」
「あのご令息と令嬢はどなたなの?」
「まさか、殿下のお子さま? あのお方はご夫人?」
「いつの間にご結婚なさったの?」
令嬢たちが騒然としている。
マクスは聞こえないのかポーカーフェイスで、肝心のルードリックは我関せずの体だ。
エリアナだけが視線を感じて冷や汗をかいている。
──私はこのお方の母親ではありません……。
トーイが一緒にいれば、二人の子どもだとささやかれたに違いない。彼は移動魔法で一足先に到着しているはずだ。
「お待ちしておりました。陛下より、丁重におもてなしするよう仰せつかっております。お部屋はパール宮殿にご用意しております。まずは陛下にご挨拶を」
大公殿下一行を出迎えたのは壮年の男性で、陛下の最側近であるラベル宰相と名乗った。五歳の幼児相手に動じることなく、敬意をもって話しかけているのはさすがだ。
そうして案内されたのは謁見室ではなく、応接室だった。
座ってお待ちくださいと言いおいてラベル宰相が出ていき、ルードリックにも「座ってろ」と命じられてソファに腰かけるも、心はどうにも落ち着かない。
三人掛けのソファにルードリックと並んで座り、マクスは陛下とエリアナの背後に立っている。
──殿下の侍女として失礼のないようにしなくちゃ。
そわそわと入り口を気にしているとぱっととドアが開いたので、エリアナは弾かれるように立ち上がった。
マクスは敬意を示す姿勢を取り、ルードリックは座ったままだ。
上質で華やかな服を身にまとって威風堂々としている、一目で皇帝だとわかる人が颯爽と入ってくる。その後ろにトーイとラベル宰相が付き従っていた。
歩みを止めることなく上手に移動して、椅子に腰かける前にすっとエリアナに目をむけた。帝国の皇帝は、圧倒的な風格を持つ金髪碧眼の美青年だった。