護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「帝国の皇帝陛下にお目にかかります。エリアナでございます」
すかさず体に沁みこんでいるきれいな所作をすると、「ふむ、かけたまえ。楽にしてよい」と微笑んだ。ファーストコンタクトは成功のようである。
気持ちがすこし落ち着くと、陛下のそばに真っ赤な鳥が見えた。右肩にちょこんと乗っている。
──陛下の守護獣なのかな?
金色の瞳がエリアナをじっと見つめてくる。
──どうしてみられているの。
ずっと視線は外されない。しかも目がギラギラしているようにも思う。
ひょっとして良くない者として警戒されているのか。守護獣からの圧に冷や汗がたらたらと流れる。
──殿下、助けて……。
「アルディナル大公。久しいが、会わない間にずいぶんと若返ったものだな? 私と同年だったというのに。その姿で登城したならば、待ち構えていた令嬢たちはさぞ残念だっただろう」
「あの人だかりは陛下の差し金だったのですか」
「差し金とは人聞きが悪いな。うっかりアルディナルから人が来ると漏らしただけだ。彼女たちは皇妃候補ゆえに選ばれなければ大公妃を狙う。あらかじめ恐ろしくも麗しいという婿殿をリサーチするのは当然だろう?」
「誰が婿だ。冗談だろう」
「はははっ、相変わらずだな」
にこにこしているけれど、陛下のかもしだす威圧はすごい。さすが帝国の皇帝だ。
「とまあ、冗談はさておき。解呪師の件はトーイから報告を受けている。承認するには、この目で真偽を確かめねばならん」
「……仕方がない、見せてやろう。エリアナ、手を」
本来の姿に戻ったのを目の当たりにし、陛下と宰相が感嘆して身を乗り出した。
「ほう、これは素晴らしいな! ……だが、完全には解けないのだな。手を離せば幼児になるのか」
陛下は「ふむ」と考え込む。