護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「恐れながら陛下。エリアナ殿は呪術師の作った呪物などは完璧に解呪されます。それも触れるだけです。素晴らしい力です」
トーイが進言すると陛下はニッと口角を上げ、「ならば」と指を鳴らした。ぱちんと音が響くと、宰相が書類を手渡す。
「実は皇都のアカデミーでは、一人の女生徒を中心にして困ったことが起きている。私の弟もラベル宰相の子息も関与しているのだが、その女生徒はなんらかの呪物を使用している可能性があるのだ」
陛下はテーブルの上に人物画つきの身上書を数枚並べて置いた。
ルードリックが手に取り、難しい顔つきをしている。
「呪物……つまりその困りごとの原因を突き止めて解決せよと仰せですか」
「この一件を解決出来たら、エリアナには解呪師の称号はもちろん、爵位も与えよう」
「どうだ? いい提案だろう」とエリアナを見る陛下からは有無を言わさぬ気迫が出されている。
身震いしながら「仰せの通りでございます」と返事するしかない。
「エリアナ、なんでもかんでも引き受けなくてもいい。とりあえずこれを見てみろ」
ルードリックからエリアナに手渡された身上書は五枚。
金髪の皇子殿下、黒髪の宰相子息、赤髪で皇宮騎士団長の子息、銀髪の公爵子息。
誰もが身目麗しく優秀な成績で、学園内でも人望のある男子生徒たちだろう。皇子殿下以外は婚約者がいる。
身上書唯一の女生徒は男爵令嬢のグレッタ。茶髪でごく普通の成績だ。平民だったけれど男爵家の養女になったとある。
「で、その困ったことというのはなんだ?」
「この男爵令嬢が上級な子息たちを篭絡しまくるのだ。我が弟も嵌まってうつつを抜かしておる」
「この女生徒に?」
ルードリックは懐疑的だ。