護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 陛下がパチンと指を鳴らして「決まりだ。ラベル、潜入の手筈を整えよ」とのたまい、「ところで」と言葉を継いだ。

「私の守護獣がさっきから召喚しろとうるさいのだ。少々騒がしいが許せ」
「陛下、ここで召喚など!」

 ルードリックが焦るも陛下は構わずにニッと笑う。

「【スサノーン】」

 陛下の口から名がこぼれた刹那、カッと炎があがり、全長二メートルほどの真っ赤な鳥が姿を現した。キエェエェーッと咆哮するとゴオッと炎の威力が増し、エリアナは思わず悲鳴を上げる。

「きゃあっ」
「ちっ」

 舌打ちをしたルードリックがエリアナを引き寄せる。

「トーイ魔術を許す」
「御意!」

 陛下の命令でトーイが防御幕を張ると、ソファセットの周りにとんでもない炎の壁が出来上がった。

 ──間一髪だったわ……なんて恐ろしいの……。

 エリアナはぶるぶる震え、なるべくルードリックにくっついた。
 魔法陣を維持するトーイの額に汗がにじんでいる。それほどに守護獣の力がすさまじいのだ。

「おいヘイブン、いい加減にしろ。宮殿を燃やす気か」
「ルード、そう怒るな。スサノーンはちょっと喜んでいるだけだ。だがさすがにこれ以上は困る」

 陛下が何事かをつぶやくと、あれほどに大騒ぎだった炎がシンと収まった。
 スサノーンが二十センチほどに縮まってホッとするも、今度は金色の瞳をギラッとさせ、ばさっと飛び立ってエリアナの方へ向かってきた。

「えっ、え?」

 ──なんでこっちに来るの? やっぱり良くない者だと思われてるの!?

「エリアナさま!」

 マクスの腕が矢のように飛んでくるスサノーンをせき止めようと動き、ルードリックはエリアナを自分の陰に入れた。
 それを素早くかいくぐってきたスサノーンが目の前に迫り、エリアナはぎゅっと目をつむった。

 ──あれ? 痛くない。どうして?
< 92 / 134 >

この作品をシェア

pagetop