護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
恐る恐る目を開けるとスサノーンはエリアナの肩に乗っていて、すりすりと顔を寄せている。敵意を感じない。
それどころかちび獅子のように懐いている気もして、かわいらしく??
「あ、あの、陛下、これはいったいどういうことでしょう……?」
「驚かせたな。スサノーンはそなたが好きらしい。そなたからは守護獣が好む心地いいエナジーが出ているそうだ。清水のごとく一点の濁りもない魂を持っていて、常に力強い光を放っていると」
──エナジー……私からそんなものが。ちび獅子が私に懐いてるのも、そのせいなのかな?
スサノーンのきゅるるんっとした目がエリアナを見つめる。
──なんてかわいいのっ。怖い子って思ってごめんね!
指先で頭を撫でるとうっとりと目を閉じる。守護獣だけれど、こうしていると普通の小鳥と変わりがない。
「まったく、事前に説明しろ」
不機嫌なルードリックを見て陛下は声を立てて笑う。
「焦ったルードを見たのは久々だったな」
陛下は愉快そうにして、エリアナの肩でうっとりしているスサノーンを見た。
──陛下って、わりといたずら好きなのね……。
賢帝だけれど、厄介な人かもしれない。
しかしすべてを燃やし尽くすほどの炎が上がっていたというのに、部屋の中は燃えあともない。陛下は無傷ですむとわかっていて守護獣を召喚したのだ。
「そういえばルード、卵を持ってきているのだろう。見せてくれ」
「……あとで見せようと思ってたんだが、スサノーンがいるならいいだろう。トーイ頼む」
「御意。箱を出します」
エリアナは卵を持ってきていることを知らなかった。おそらくマクスも。
ルードリックは陛下だけに見せるつもりだったらしい。
トーイがテーブルの上に魔法陣を構築すると、中央に黒い箱が現れる。大切な卵ゆえ移動中の不測の事態を避けるために、封印の術が施されているという。
「ナギュルスは力を失った状態だ。スサノーンから力を吹き込んでもらえれば目覚めるかもしれない」
──目覚めるって、また大騒ぎになるんじゃ?
「その可能性はあるか。ならば移動しよう。ここで目覚められたら困る。エリアナも一緒に。幼児のルードでは守護獣の制御は無理だ」
陛下はスッと立ち上がった。