護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

守護獣ナギュルスの目覚め


 そこはとても広く、大広間といっても差支えのないところだった。壁も天井も無機質で、ところどころ焦げ跡がある。

「守護獣は神獣だ。遠い昔、人間の世界が魔界に侵食された危機があった。人々は魔物に食われ、植物は瘴気にまみれる。飢餓が起こり人々は助けてくれと神に祈った。そんな中魔物を倒すべく剣を取ったのが我らの先祖だ。神の使いである神獣と契約し、神の祝福を受けた者とともに魔界を封じ、今の世界がある」

 そう陛下が語ると、エリアナの肩にとまっていたスサノーンが飛び立った。陛下の腕にちょんととまる。

「神獣ゆえに目覚めたときの力は強大で、先ほどの比ではないぞ。しかしここ『神獣の間』ならばなにが起こっても大丈夫だろう」

 ラベル宰相もマクスも緊張の面持ちだ。
 結局応接室にいた全員が移動してきている。

 卵の入った箱は中央に置かれた石の台に乗せられた。

「では封印を解きます」

 トーイの杖がトンと鳴ると箱を覆っている魔法陣がぴかっと光った。
 箱がぱたぱたと開き、金色の卵が現れる。クッションの上に収まったそれは、卵というよりも宝玉のようだった。
 そしてエリアナの目には、卵の周りに黒い鎖状のものがまとわりついているように見える。

 ──あれは、呪いよね……。殿下の黒い靄と同じ力を感じるわ。

 ルードリックの守護獣は力を失っているだけでなく、呪いの大半を請け負ったために縛られているようだった。

 ──神獣が囚われるなんて、すごい呪力……。
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