護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
呪いの鎖に触れるのは、素直に怖い。
けれどルードリックはこれまで幾度となくエリアナを庇ってくれていた。
トーイもマクスも、決してひとりじゃないと思わせてくれる。
こんな素敵な人たちだから頑張ろうと思えるのだ。
──この国に来てよかった。
「それでは、行きます!」
卵の前に立ち、こわごわとゆっくり手を伸ばしていく。真っ黒な鎖はまがまがしい靄を放ち、エリアナを威嚇してくる。
──ああ、やっぱり怖い。
だって呪いに触れるたびに痛いのだ。神獣の鎖ならばどれだけの衝撃をうけるかわからない。
──最悪、気絶するかも。
そ~っと鎖に触れると予測以上の衝撃にみまわれてしまい、エリアナの時が止まる。金色の光に包まれ、脳裏に光り輝く存在が現れた。
『ああ、これは困ったことよ』
──これは……このお方は……。
困惑の最中といった体の金色の存在との会話……これは、あのときの記憶だ。
「……さま! エリアナさま! 大丈夫ですか!?」
気づけばマクスに抱えられて隅に移動していた。ラベル宰相も心配そうにのぞき込んでいた。
「しばらく意識がありませんでした。なんともありませんか?」
「ええ、ありがとう。ちょっとびっくりしただけ……それより殿下の守護獣は……」
「無事に解呪されました。エリアナさまが卵に触れられた瞬間『バチン!』とはじける音がして卵が割れ、黒獅子が飛び立ちました。御覧ください」
マクスがエリアナを支えて立たせ、陛下が「トーイ防音を解除」とのたまった。
トーイの保護膜の外では、すさまじい雷光が部屋を蹂躙していた。
「ガオォォオォォーーーー!!」
ズガガーーーーン!!
ガガァーーーーン!!
獅子の咆哮がこだまし雷撃がさく裂する。
あまりのすさまじさで建物が揺れて崩れてしまいそうだ。
──炎よりもずっと大騒ぎで破壊的な……はっ!
「殿下はどちらに!? 手をつながないと!」