護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「大丈夫です。殿下は本来のお姿に戻られましたから」
「え?」
──それじゃ、殿下は雷撃のさなかにいるというの?
エリアナは目を凝らした。
金色の稲光が絶え間なく空間を切り裂き、恐ろしくも美しい光景のただなかにルードリックは佇んでいる。
まるで雷がやさしい雨であるかのように平常な姿で。
彼が見上げているのは漆黒の翼をもつ黒獅子。金色の中に浮かぶ姿は体の大きさは違うけれど、間違いなくエリアナに懐いていた獅子だった。
「卵の呪縛が解けた瞬間にルードはもとに戻った。今まで守護獣と呪いを共有していたのだろう。一方が解けても完全なる解呪とはならなかったようだな」
陛下の声は落ち着いている。スサノーンは腕にとまったまま、待機させている感じだ。
「殿下、お早く! いくら私でも魔力が切れます!」
トーイが焦燥感たっぷりに叫んだ。
──トーイさん、頑張って!
二連続で守護獣の力に耐えるのは大変な大仕事だろう。『魔術師使いが荒い』とスルバスが笑っていたことを思い出して、苦笑いした。
「【ナギュルス】」
静かで、それでいて力強い響きだった。
名を呼ばれた黒獅子は雷撃を収めて鎮まり、ルードリックのもとに降りた。そしてぐるぐると喉を鳴らして甘えている。
「おめでとう。ルード。解呪されたのは子ども化だけか?」
陛下の問いにルードリックは軽くうなずいた。
大公家がうけた失明の呪いは根深い。
「エリアナ感謝する。なにかほしいものはあれば言ってくれ。それが星であろうとも世界であろうとも全力で手に入れてみせる」
「殿下、私はなにも……一緒に街に行ってくださるだけで十分です」
「そうか」
心なしか残念そうに見えるのは気のせいか。
「かの国のせん滅でもいいんだが」
ぼそっとつぶやくからエリアナの背中が凍り付いた。
──話題を変えよう!
「そ、それより殿下、私思い出したことがあるんです。解呪の力をもったときのこと。聞いてくださいますか? みなさんも」
「もちろんだ」