護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 状況が理解できなくて疑問符だらけになってしまう。

『ふむ。わが愛し子を守るのは当然のことよ』

 アクエラはころころと笑った。

『どうして魂を抜かれてしまったのでしょう』
『わからぬ。悪者のしでかすことなど、まっこと意味不明じゃ。しかしあの悪しき者は、別の体にそなたの魂を移植するようじゃて』

 アクエラが示した下界では自分の体と赤毛の体があった。

『あの赤毛の魂をそなたの体に入れるようじゃの。そしてそなたは赤毛の中に入るようじゃ。嫌ではないか?』
『……わかりません。でも別の体で生きられるのでしょうか』
『大丈夫じゃ。しかしわらわが祝福した魂にあのようなことをしたら、術者のほうは相当のダメージを受けているはずよ』

 赤毛の女性はズルイータ公爵家の令嬢だ。父親の公爵の姿もある。術者はフードをかぶった男。

『さて、そなたを下界に返さねばならぬが、そのままでは弱いゆえにすぐに命を失ってしまう。なにか武器を持たせたい。今までは祈りで聖力を与えておったが、なにもせずとも力を無限に使えるようにしようか』
『聖力はもういりません。別の体に入るなら、もう聖女として活動することはないでしょうから』
『ふむ、いらぬのか。では別の力を授けよう。わらわの権能。自然のエネルギーを吸収して悪しき力をはじく力に変える。浄化する聖力とは別物じゃ。呪いも瘴気も毒も効かぬぞ。これからのそなたは悪しき力を破壊しまくるのじゃ!』
『それは無敵ですね』
『そうじゃ、まったく爽快じゃて』

 アクエラは『我ながらいいアイデアじゃ』ところころ笑い、エリアナの魂に祝福が与えられた。

『今まで通りに祈れば少しは聖力を使える。癒しとするがよいぞ』
『ありがとうございます』

 突然なにかに引っ張られるような感覚がして、アクエラが『時が来たようじゃ』とのたまった。
< 99 / 134 >

この作品をシェア

pagetop