早河シリーズ第六幕【砂時計】
過去に逮捕した犯罪者達は更生して新しい人生を歩もうとしていた。その矢先に何者かに命を奪われた。
『じわじわと外堀から埋めていくようなやり口ですね。三人を殺した奴の狙いは俺でしょう』
張り詰めた空気が流れる。堀井は煙草の灰を灰皿に落とした。
『そうだ早河。警察庁の阿部知己って警視、知ってるか?』
『ああ、捜査本部の責任者の。いいえ、知りませんよ。刑事時代に警察庁のエリートとお近づきになる機会もありませんでしたし』
『だよな……。いや、その阿部って奴が妙にお前のことを気にしている素振りだったからな。一連のガイシャを逮捕した元刑事としてお前のことを探るのはわかるんだが』
堀井は意味深に口を閉ざした。しばらく三人で事件の話をした後、堀井が先に事務所を辞する。
『なぎさちゃんと喧嘩でもしたのか?』
事務所に早河と二人だけになった上野が問いかける。早河は肩を竦めてなぎさのデスクを見た。
『助手を辞めさせたんです。あいつはもうここには来ません』
『お前は本当にそれでいいのか?』
『俺のせいでなぎさが危険な目に遭うよりも……ここで会えなくなる方がマシです』
花瓶に生けられた花は綺麗なピンク色をしていた。共に生けられているカスミソウしか花の名前はわからない。
殺風景なこの部屋に花を飾りたいとなぎさが言い出した時、特に反対はしなかった。早河は花に興味はないが、この事務所がなぎさが過ごしやすい空間になればいいと思っていた。
花瓶の水はどのくらいの頻度で替えればいいのかすら自分にはわからない。Edenで購入しているコーヒー豆や掃除道具、筆記類の買い置きなどもすべてなぎさが行っていた。
もう、なぎさがこれ等の仕事をすることはない。
『早河。お前の守り方は間違っちゃいないよ』
事務所の扉に向かう上野はドアノブに手をかけたところで振り向いた。
『守り方は間違いではないが、それが最善とも言えないぞ。守る方法はひとつじゃない』
早河は無言で上野を見ている。上野は静かに事務所を出ていった。
『じわじわと外堀から埋めていくようなやり口ですね。三人を殺した奴の狙いは俺でしょう』
張り詰めた空気が流れる。堀井は煙草の灰を灰皿に落とした。
『そうだ早河。警察庁の阿部知己って警視、知ってるか?』
『ああ、捜査本部の責任者の。いいえ、知りませんよ。刑事時代に警察庁のエリートとお近づきになる機会もありませんでしたし』
『だよな……。いや、その阿部って奴が妙にお前のことを気にしている素振りだったからな。一連のガイシャを逮捕した元刑事としてお前のことを探るのはわかるんだが』
堀井は意味深に口を閉ざした。しばらく三人で事件の話をした後、堀井が先に事務所を辞する。
『なぎさちゃんと喧嘩でもしたのか?』
事務所に早河と二人だけになった上野が問いかける。早河は肩を竦めてなぎさのデスクを見た。
『助手を辞めさせたんです。あいつはもうここには来ません』
『お前は本当にそれでいいのか?』
『俺のせいでなぎさが危険な目に遭うよりも……ここで会えなくなる方がマシです』
花瓶に生けられた花は綺麗なピンク色をしていた。共に生けられているカスミソウしか花の名前はわからない。
殺風景なこの部屋に花を飾りたいとなぎさが言い出した時、特に反対はしなかった。早河は花に興味はないが、この事務所がなぎさが過ごしやすい空間になればいいと思っていた。
花瓶の水はどのくらいの頻度で替えればいいのかすら自分にはわからない。Edenで購入しているコーヒー豆や掃除道具、筆記類の買い置きなどもすべてなぎさが行っていた。
もう、なぎさがこれ等の仕事をすることはない。
『早河。お前の守り方は間違っちゃいないよ』
事務所の扉に向かう上野はドアノブに手をかけたところで振り向いた。
『守り方は間違いではないが、それが最善とも言えないぞ。守る方法はひとつじゃない』
早河は無言で上野を見ている。上野は静かに事務所を出ていった。