パーフェクト同期は恐妻家!?
「私、記憶力がないというか、視野が狭いの。昔のクラスメイトの顔とか名前とか、全然覚えてないタイプ」
 そう言っていたし、僕のことも全く覚えていないようだった。
 残念な気持ちもあったが、あの頃の情けない自分のことは忘れてくれていたほうが好都合でもある。
 もしかしたら、僕も初恋の相手に夢を見すぎていただけかもしれないし、ここはきちんと彼女のことを知りたいと思い、積極的に話しかけた。
 何故、いつもそんなに怯えた様子なのかはわからないが、心を開いてほしくて⋯⋯。
 あまり公にしていないが、僕はかなりの甘党である。
 何となく人に知られたくなかったことだが、それをチャンスに変えた。
「柏原さんも甘党なら、ケーキ屋に付き合ってくれない?男一人だと、ちょっと入りにくいんだ」
 その日から、僕らの距離はどんどん近づいた。
 しかし、どんなに近づいても、何故か見えない壁のようなものを感じた。
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