Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
ベテルギウス対シリウス
「シリウス、お前その剣は?」
リゲルの質問を無視し、シリウスは七星剣に意識を集中させた。
「一の秘剣、魚釣り星!」
剣が鞭状に変形し、シリウスがしならせるとベテルギウスとリゲルに襲いかかった。
「ぬわっ!!」
「ひっ!!」
外した。が、これは威嚇攻撃だ。当てる気はない。
「シリウス、てめえ……」
ベテルギウスの頬に汗が流れる。1ヶ月前、ポラリスを一緒に盗んだ人物とは思えない。全身に覇気がみなぎり、鋭く澄んだ眼光を向けてくる。
「俺な、紫微垣の修行をしているんだ」
「紫微垣!?」
「ポラリスの守護戦士か!?」
驚愕する悪童たち。ポラリスを盗むとき、その守護戦士がいることは調べていた。しかし、もう60歳を過ぎたじいさんだから出し抜けると思って犯行に及んだのだ。その時は、シリウスを捨て駒として切り捨てて逃げた。
そのシリウスが、紫微垣の修行をして自分たちを追ってきた……。
「覚悟しな。お前らとっ捕まえて連れて帰る」
するとリゲルが投石をしてきた。コントロールがよく、スピカと同レベルだ。
石がまっすぐにシリウスの顔に向かってくるが、シリウスは剣の柄を上に向けて構える。
「七の秘剣、文綾の星!!」
石が空気の渦によってはじき飛ばされた。
「無駄だ」
悪童たちが顔面蒼白になる。ベテルギウスはやむなく、そばにあった棒きれをとって構えた。
「来いシリウス! 叩きつぶしてやる!!」
ああ、こいつは剣術が得意だったな。学舎の生徒の中でも一、二を争う腕と聞いたことがある。それなのに、自分の暴力のためにその腕を使い続け、師匠から破門されたとも聞いた。
「…分かった。相手になってやる」
シリウスは剣を構えたかと思うと突然目の前から消えた。
「なっ…!」
ベテルギウスはとっさに棒を頭上に構えた。七星剣の剣閃が降りかかっていたのである。
「やるな、ベテルギウス」
シリウスは本気で斬りかかったつもりだ。しかし、ベテルギウスは剣客の直感でそれを受け止めたのだ。
その後は激闘だった。互いに剣を繰り出しては斬り結んで防ぎ、はじき飛ばしてまた斬りかかる。はたから見ているリゲルは、呆然とするしかない。
――こいつ、いつの間にこんな力を――
ベテルギウスは心の中で毒づいた。俺の知っているシリウスは、身体能力は高かったが剣術の稽古などしていなかったし、素人だ。たまにけんかで棒きれを振ることがあってもベテルギウスが勝っていた。なのに、自分と匹敵する剣技で迫ってくる。
――この男、やはり強い――
シリウスはベテルギウスの技量に舌を巻いていた。破門されたとはいえ、この男の技は文字通り同世代では最強クラスだろう。純粋な剣では仕留められない。
そう感じたシリウスにピンチが訪れた。足を滑らせて倒れてしまったのだ。
「もらった、シリウス!!」
ベテルギウスが棒を振りかぶって襲いかかる。
「かかったな」
不適に笑うシリウス。七星剣を鞭上に変形させる。
「四の秘剣・破(やれ)十字!」
伸びた七星剣がベテルギウスの棒に垂直に巻き付く。ノーザンクロスが象られた瞬間、シリウスは渾身の力で柄を引っ張った。
ボキン、という音を立てて棒が折れたのだ。
「なっ!」
「これで手も足もでないだろ?」
迎撃や武器破壊、防御に重きを置く紫微垣の秘剣の真骨頂だ。自分が不利であれば相手を無力化すればよい。
呆然とするベテルギウスにシリウスは言った。
「お前、なんでポラリスを盗もうって言ったんだ? 今、どこでどうやって暮らしている?」
その口調は、悪友を責めるでもなく、心配するものだった。
親が死んだり、離婚したりという境遇同士。しかし、悪童2人は家庭環境が悪かったのに対し、シリウスはそれがない。記憶がほぼないというのが正しいのだが、もっと詳しく言うと両親が行方不明になるまで愛情いっぱいに育ててくれたような気がする。だから、人の善性を信じることができるのだ。
悪友の彼らには……それがない。
「シリウスー! 大丈夫!?」
背後からミラの声がした。
「ああ、追いついたか」
そう振り返った瞬間、ボンっという音とともに辺りが白い煙に包まれた。
「何だ!?」
煙がはれると、ベテルギウスとリゲルの姿がなかった。
――リゲルにやられたか。
確証はないが、ほぼ間違いない。短気で激情任せに動くベテルギウスに対し、リゲルは気弱に見えつつも周りを見て、頭を使ってくる。学舎では悪童のレッテルを貼られているが、勉強はできる方でスピカにも劣らない。先ほどの煙も、火薬か何かを調合してオリジナルのものを作ったのだろう。
――詰めが甘い!
アルクトゥルスならそう叱っただろう。シリウスは悔しそうに唇をかんだ。
リゲルの質問を無視し、シリウスは七星剣に意識を集中させた。
「一の秘剣、魚釣り星!」
剣が鞭状に変形し、シリウスがしならせるとベテルギウスとリゲルに襲いかかった。
「ぬわっ!!」
「ひっ!!」
外した。が、これは威嚇攻撃だ。当てる気はない。
「シリウス、てめえ……」
ベテルギウスの頬に汗が流れる。1ヶ月前、ポラリスを一緒に盗んだ人物とは思えない。全身に覇気がみなぎり、鋭く澄んだ眼光を向けてくる。
「俺な、紫微垣の修行をしているんだ」
「紫微垣!?」
「ポラリスの守護戦士か!?」
驚愕する悪童たち。ポラリスを盗むとき、その守護戦士がいることは調べていた。しかし、もう60歳を過ぎたじいさんだから出し抜けると思って犯行に及んだのだ。その時は、シリウスを捨て駒として切り捨てて逃げた。
そのシリウスが、紫微垣の修行をして自分たちを追ってきた……。
「覚悟しな。お前らとっ捕まえて連れて帰る」
するとリゲルが投石をしてきた。コントロールがよく、スピカと同レベルだ。
石がまっすぐにシリウスの顔に向かってくるが、シリウスは剣の柄を上に向けて構える。
「七の秘剣、文綾の星!!」
石が空気の渦によってはじき飛ばされた。
「無駄だ」
悪童たちが顔面蒼白になる。ベテルギウスはやむなく、そばにあった棒きれをとって構えた。
「来いシリウス! 叩きつぶしてやる!!」
ああ、こいつは剣術が得意だったな。学舎の生徒の中でも一、二を争う腕と聞いたことがある。それなのに、自分の暴力のためにその腕を使い続け、師匠から破門されたとも聞いた。
「…分かった。相手になってやる」
シリウスは剣を構えたかと思うと突然目の前から消えた。
「なっ…!」
ベテルギウスはとっさに棒を頭上に構えた。七星剣の剣閃が降りかかっていたのである。
「やるな、ベテルギウス」
シリウスは本気で斬りかかったつもりだ。しかし、ベテルギウスは剣客の直感でそれを受け止めたのだ。
その後は激闘だった。互いに剣を繰り出しては斬り結んで防ぎ、はじき飛ばしてまた斬りかかる。はたから見ているリゲルは、呆然とするしかない。
――こいつ、いつの間にこんな力を――
ベテルギウスは心の中で毒づいた。俺の知っているシリウスは、身体能力は高かったが剣術の稽古などしていなかったし、素人だ。たまにけんかで棒きれを振ることがあってもベテルギウスが勝っていた。なのに、自分と匹敵する剣技で迫ってくる。
――この男、やはり強い――
シリウスはベテルギウスの技量に舌を巻いていた。破門されたとはいえ、この男の技は文字通り同世代では最強クラスだろう。純粋な剣では仕留められない。
そう感じたシリウスにピンチが訪れた。足を滑らせて倒れてしまったのだ。
「もらった、シリウス!!」
ベテルギウスが棒を振りかぶって襲いかかる。
「かかったな」
不適に笑うシリウス。七星剣を鞭上に変形させる。
「四の秘剣・破(やれ)十字!」
伸びた七星剣がベテルギウスの棒に垂直に巻き付く。ノーザンクロスが象られた瞬間、シリウスは渾身の力で柄を引っ張った。
ボキン、という音を立てて棒が折れたのだ。
「なっ!」
「これで手も足もでないだろ?」
迎撃や武器破壊、防御に重きを置く紫微垣の秘剣の真骨頂だ。自分が不利であれば相手を無力化すればよい。
呆然とするベテルギウスにシリウスは言った。
「お前、なんでポラリスを盗もうって言ったんだ? 今、どこでどうやって暮らしている?」
その口調は、悪友を責めるでもなく、心配するものだった。
親が死んだり、離婚したりという境遇同士。しかし、悪童2人は家庭環境が悪かったのに対し、シリウスはそれがない。記憶がほぼないというのが正しいのだが、もっと詳しく言うと両親が行方不明になるまで愛情いっぱいに育ててくれたような気がする。だから、人の善性を信じることができるのだ。
悪友の彼らには……それがない。
「シリウスー! 大丈夫!?」
背後からミラの声がした。
「ああ、追いついたか」
そう振り返った瞬間、ボンっという音とともに辺りが白い煙に包まれた。
「何だ!?」
煙がはれると、ベテルギウスとリゲルの姿がなかった。
――リゲルにやられたか。
確証はないが、ほぼ間違いない。短気で激情任せに動くベテルギウスに対し、リゲルは気弱に見えつつも周りを見て、頭を使ってくる。学舎では悪童のレッテルを貼られているが、勉強はできる方でスピカにも劣らない。先ほどの煙も、火薬か何かを調合してオリジナルのものを作ったのだろう。
――詰めが甘い!
アルクトゥルスならそう叱っただろう。シリウスは悔しそうに唇をかんだ。