Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

紫微垣の修行地・貪狼(とんろう)の祠

 2人が向かったのは町の東、大岩が多くある場所だった。そこにあるのが「貪狼の祠」だ。北斗七星のアルファ星にあたる。
 ここに来た理由は、昨日のじいさん――アルクトゥルスが「貪狼の祠」に行くと言っていたからだ。町から少し外れた林を過ぎると、岩が無造作に散乱している場所に着いた。パワースポットのような雰囲気がある。
「ここなの?」
 スピカが首をひねった。
「そうだと思うんですけど……」
「ぐわあああああ!!」
 突然、奥から絶叫が聞こえてきた。
「今の…シリウス!?」
 ミラはとっさに駆けだした。
「ちょっと、待ってよ!!」
 スピカも慌てて後を追う。

 奥に走っていくと、そこには岩をかついで歩くシリウスがいた。
「…何やっているの?」
 スピカは顔をひきつらせた。もしかしてポラリスを盗んだ刑罰なの? そうだとしたら何て原始的な……。
「シリウス!」
「ミラ? 何でここに?」
 岩を下ろすシリウス。その全身は汗でべったりと濡れている。
「あのおじいさんがここにシリウスを連れて行くって言っていたから」
「じいさん? ああ、アルクトゥルスのことか」
 岩に寄りかかり、うんざりした表情で呟いた。
「あのじじい、何考えているか分からん。俺をここに連れてきてやきを入れてくるかと思ったら、こんな大岩かつがせて歩かせるんだぜ」
「これをかついで歩く!?」
 ミラとスピカが目をむいた。大人数人がかりでやっと持ち上げられそうな大きさなんですけど!
「盗みをした罰なの?」とミラ。
「いや、それがな……」
「シリウス」
 低い声がした。奥にある庵からアルクトゥルスが出てきたのだ。
「岩をおろしてよいとは言っとらんぞ? やり直しだ」
「はあ? だってこいつらが来たから応対していただけで……」
 突然、シリウスの頭にげんこつが飛んできた。
「いってえ!!」
「やり直しだ」
 踵(きびす)を返して庵に帰ろうとするアルクトゥルス。それを見てシリウスは怒りが頂点に達した。
「てめえ、いい加減にしろ!!」
 シリウスがダッシュで殴りかかった。すると、アルクトゥルスは腰にかけていたものを取り出す。まるでひしゃく……北斗七星を象ったような金属の棒だ。
「二の秘剣……」
 その言葉とともに棒が光る。次の瞬間、ひしゃくの先の部分が伸びてアルクトゥルスを円形に囲んだ。さらにアルクトゥルスが腕を上げると猛スピードで竜巻を巻き上げるように上昇した。
「螺旋昴(らせんすばる)!」
 竜巻に弾かれるようにシリウスは吹っ飛ばされ、地面にたたきつけられた。
「ぐえっ!!」
 呆然とするミラとスピカ。
「紫微垣の武器、七星剣(しちせいけん)による秘剣だよ」
 アルクトゥルスが棒…七星剣を2人に見せながら説明した。北斗七星の形をしたその棒を見ると、星の部分には、クリスマスのオーナメントのような水色の鏡の玉が埋め込まれている。剣とはいうがほとんど金属の棒で、刃の部分はわずかしかない。
 紫微垣はこの七星剣を武器に、「北辰の祠」に安置されているポラリスを盗賊などから守ってきたという。
「シリウス、お前は我慢が足りない。しばらく1人で修行を続けよ」
 そう言うと、老戦士は行ってしまった。
「いって……くそっ、あのじじい。手加減なしかよ」
 後日知るのだが、あれでもアルクトゥルスは手加減していた。次元が違うようだ。
「シリウス、修行って何?」
 ミラが尋ねると、シリウスはため息をついて答えた。
「紫微垣になるための修行だよ」
「……ええええっ!?」
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