蒼い空

アイスルヒト

思い出のあの日のように
綺麗な空だった
あなたと初めて学校をサボり
海へ行った日
忘れることのない大切な思い出

いつもと変わらない
一日の始まり
学校の準備をして
急いで駅へ向かう
自転車で三十分
駐輪場に自転車を止め
ホームへ向かう
はずだった
私の足は
歩道橋の真ん中で止まった
(呼ばれた?)
どこかで私を呼ぶ声がした
あたりを見渡すが
朝の通勤の時間で
声の主らしき人は見当たらない
『おいで』
声のした方向を見る
でも、声のした方向は
歩道橋の下だった
早く、とせかすように
風が私の背中を押す
『あなたは十分がんばったわ。もういいと思う。』
(もう、いいのかな)
自然と足が前に出る
ホームでアナウンスが入る
でもその音は
はるか遠くでなっているように小さな音だった
フェンスに足をかける
周りの人が私を見ているのが分かった
それでもかまわない
呼ばれているんだからいかなきゃ
飛び降りる
落ちている途中
あなたが見えた
大きな目をさらに大きく広げ
驚いたようにこちらをじっと見つめていた
(見つかっちゃった)
鈍い音と同時に何も見えなくなった
最後に見たあなたの顔があんな顔でよかったのか
それだけが気になった
私はひそかにあなたに恋心を抱いていた
いまになってはこの感情ごと消えてしまうが
こうなるんだったら言ってみるべきだったかな
なんて思う
あの日
あなたが現実から私を遠ざけてくれた日
その日から私の初恋は始まってたんだよ
「すき、だよ…ずっ、と…」
なんとかこの言葉だけを
この世界に遺し
私は意識を手放した
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