捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
「失礼します、閣下。ご確認いただきたいことが……」
「ディエゴ。俺は、キモいだろうか」
「えっ? あの……えっ?」
ちょうどいいところにディエゴが執務室にやってきたので顔を上げて尋ねると、ディエゴは心底ドン引きしたような顔でこちらを見てきた。
ディエゴはエルドレッドより十歳ほど年上で、妻子もいる。そして辺境伯領の誰よりも早くシャノンと知り合っている。
(王都で、最初にシャノンと知り合った……うらやましい……い、いや、こういうところが「キモい」のかもしれない!)
ディエゴに焼き餅を焼くのはやめにして、エルドレッドは咳払いをして彼を見上げた。
「いや、すまない。確認することがあるなら、言ってくれ」
「あ、はい。それはすぐに終わるのですが……大丈夫ですか、閣下?」
「……大丈夫、ではないかもしれない」
ディエゴが差し出した書類を見つつ、いや彼なら相談できるはずだとエルドレッドは思った。少なくとも、ゴードンよりはよい相談相手になると思う。
そういうことで書類を確認してサインをした後で、エルドレッドはシャノンについてのあれこれをディエゴに打ち明けることにした。
最初は戦々恐々とした様子で話を聞いていたディエゴだが、すぐに彼は白けた顔になり、今にも手の爪の甘皮でも剥きだしそうなけだるげな態度になった。
「……はぁ。つまり閣下は、シャノンのことをかわいらしい素敵な女性だと思いアプローチをかけたいと思いつつ、これがいわゆる変態行為にならないのか心配なさっているのですね」
「……有り体に言えば、な」
「なるほど。……まあ少なくとも今の段階では、ラウハたちに『キモい』と言われるようなことはないと思います」
ディエゴがそう言ってくれたので、知らぬうちに息を詰めていたエルドレッドはほっと安心して深呼吸した。妻子持ちのディエゴが言うのだから、きっと間違いないだろう。
「そうか……それなら安心した」
「もしかして閣下、シャノンを奥方として迎えようとお考えで?」
「まっ、まだそこまでではない! だがシャノンにはこれまで辛い思いをしてきた分、ここで幸せになってもらいたいし……俺としても彼女がそばにいてくれたら毎日楽しいだろうと思うし……」
「はあ」
照れ照れしながら言うエルドレッドをディエゴは生温かい目で見て、返却してもらった書類をケースに入れて小脇に抱えた。
「それって正直、もうかなり恋をしていますよね?」
そのものずばり言われて、エルドレッドは呆然とした。
「ディエゴ。俺は、キモいだろうか」
「えっ? あの……えっ?」
ちょうどいいところにディエゴが執務室にやってきたので顔を上げて尋ねると、ディエゴは心底ドン引きしたような顔でこちらを見てきた。
ディエゴはエルドレッドより十歳ほど年上で、妻子もいる。そして辺境伯領の誰よりも早くシャノンと知り合っている。
(王都で、最初にシャノンと知り合った……うらやましい……い、いや、こういうところが「キモい」のかもしれない!)
ディエゴに焼き餅を焼くのはやめにして、エルドレッドは咳払いをして彼を見上げた。
「いや、すまない。確認することがあるなら、言ってくれ」
「あ、はい。それはすぐに終わるのですが……大丈夫ですか、閣下?」
「……大丈夫、ではないかもしれない」
ディエゴが差し出した書類を見つつ、いや彼なら相談できるはずだとエルドレッドは思った。少なくとも、ゴードンよりはよい相談相手になると思う。
そういうことで書類を確認してサインをした後で、エルドレッドはシャノンについてのあれこれをディエゴに打ち明けることにした。
最初は戦々恐々とした様子で話を聞いていたディエゴだが、すぐに彼は白けた顔になり、今にも手の爪の甘皮でも剥きだしそうなけだるげな態度になった。
「……はぁ。つまり閣下は、シャノンのことをかわいらしい素敵な女性だと思いアプローチをかけたいと思いつつ、これがいわゆる変態行為にならないのか心配なさっているのですね」
「……有り体に言えば、な」
「なるほど。……まあ少なくとも今の段階では、ラウハたちに『キモい』と言われるようなことはないと思います」
ディエゴがそう言ってくれたので、知らぬうちに息を詰めていたエルドレッドはほっと安心して深呼吸した。妻子持ちのディエゴが言うのだから、きっと間違いないだろう。
「そうか……それなら安心した」
「もしかして閣下、シャノンを奥方として迎えようとお考えで?」
「まっ、まだそこまでではない! だがシャノンにはこれまで辛い思いをしてきた分、ここで幸せになってもらいたいし……俺としても彼女がそばにいてくれたら毎日楽しいだろうと思うし……」
「はあ」
照れ照れしながら言うエルドレッドをディエゴは生温かい目で見て、返却してもらった書類をケースに入れて小脇に抱えた。
「それって正直、もうかなり恋をしていますよね?」
そのものずばり言われて、エルドレッドは呆然とした。