捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
「ありがとうございます! 私、頑張ります!」
「ただし。あなたが薪を運ぶ後ろを、私も同じように薪を持っていこう」
「えっ、それは――」
申し訳ない、と言おうとしたシャノンの唇に、手袋の嵌められたエルドレッドの人差し指が迫る。
触れるか、触れないか。
そんな距離にかざされた太い人差し指にどきっとして口を閉ざすシャノンを見て、エルドレッドは小さく笑う。
「考えてもみなさい。あなたがもし、足を滑らせて薪もろとも倒れたとして、周りに誰もいなかったら?」
「それは――」
「打ち所が悪く、気を失ってしまったら? ……ディエゴたちは、驚き悲しむだろう。まさか自分たちが帰城して一番に見るのが、薪に埋もれて廊下に倒れるシャノンの姿なんて――」
そのシチュエーションだとどう考えてもシャノンが薪に埋もれる展開にはなりそうにないが、廊下で滑って転んで気絶するというのは十分考えられる。
(だったら閣下ではない他の人を……って言ったら、その人の仕事の邪魔をすることになるし……)
シャノンはしばしうーっとうめいたのちに、渋々うなずいた。
「……分かりました。では、お願いします」
「ありがとう!」
「……ちなみに閣下、お仕事は大丈夫ですよね?」
念のために問うと、エルドレッドは少しぎくっとしたのちにうなずいた。
「あ、ああ。急いでするべき案件はない」
「本当ですか?」
「ほ、本当だとも。ほら、行こう!」
少しわざとらしく言うエルドレッドをじろっと見てから、シャノンはやれやれと薪を抱えた。
(念のために、執事さんに後で言っておこう……)
「ただし。あなたが薪を運ぶ後ろを、私も同じように薪を持っていこう」
「えっ、それは――」
申し訳ない、と言おうとしたシャノンの唇に、手袋の嵌められたエルドレッドの人差し指が迫る。
触れるか、触れないか。
そんな距離にかざされた太い人差し指にどきっとして口を閉ざすシャノンを見て、エルドレッドは小さく笑う。
「考えてもみなさい。あなたがもし、足を滑らせて薪もろとも倒れたとして、周りに誰もいなかったら?」
「それは――」
「打ち所が悪く、気を失ってしまったら? ……ディエゴたちは、驚き悲しむだろう。まさか自分たちが帰城して一番に見るのが、薪に埋もれて廊下に倒れるシャノンの姿なんて――」
そのシチュエーションだとどう考えてもシャノンが薪に埋もれる展開にはなりそうにないが、廊下で滑って転んで気絶するというのは十分考えられる。
(だったら閣下ではない他の人を……って言ったら、その人の仕事の邪魔をすることになるし……)
シャノンはしばしうーっとうめいたのちに、渋々うなずいた。
「……分かりました。では、お願いします」
「ありがとう!」
「……ちなみに閣下、お仕事は大丈夫ですよね?」
念のために問うと、エルドレッドは少しぎくっとしたのちにうなずいた。
「あ、ああ。急いでするべき案件はない」
「本当ですか?」
「ほ、本当だとも。ほら、行こう!」
少しわざとらしく言うエルドレッドをじろっと見てから、シャノンはやれやれと薪を抱えた。
(念のために、執事さんに後で言っておこう……)