捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
辺境伯の恋わずらい
雪の中、外勤務に出ていたディエゴたちは夕方に帰ってきた。
彼らが帰ってくるまでシャノンは休憩室の中を行ったり来たりしながらやきもきしており、全身雪まみれのディエゴやラウハたちが誰一人欠けることなく帰ってきたと知るとほっとして、嬉しそうな顔で暖炉に薪を足していた……とエルドレッドに教えてくれたのは、その場に居合わせていたという騎士見習いである。
その騎士見習いはかつて、シャノンに片想いしていた。
その噂を聞きつけたエルドレッドが彼を呼び出して膝を突き合わせ一時間ほど話した結果、彼はシャノンに片想いする少年からただのファンになっただけでなく、シャノンの様子をエルドレッドに教えてくれる係になってくれた。
ゴードンは「大人げない……」、ディエゴは「若者を脅さないでください」と言ってきたが、とんでもない。
エルドレッドはただ、自分もまたシャノンに恋をしていることや、どれくらい彼女のことを恋しく思っているかなどについて話して少年に納得してもらい、「それじゃあ僕が、お二人の恋の架け橋になります!」と自ら言ってもらったのだ。
(今日も、シャノンと一緒に行動できてよかった……)
積雪期のユキオオカミの行動についての記録を書きつつも、エルドレッドはにやにや笑うのを止められない。ともすれば記録に間違って「シャノンはかわいい」と書きそうだが、その辺りはしっかりしているのがエルドレッドという男である。
シャノンが薪置き場の鍵を借りたらしい、という話を聞いたエルドレッドはすぐさま薪置き場に向かった。報告書が途中になっていたが、明日までに仕上げればいいものだから大丈夫だ、と己に言い訳した上で。
案の定シャノンは、騎士たちのために薪を運ぼうとしていた。
どんと積まれた無骨な薪の前に立つ、春の妖精。
絵に……はならない光景だが、ギャップは感じられたのでそれはそれで大変よかった。
だが、かわいらしい制服を着たかわいらしいシャノンが薪を運ぶなんて、とんでもない。
万が一怪我をしてはならないし、下手すれば子どもよりも体の小さい彼女が薪を運ぶ姿なんて、微笑ましいどころか「虐待?」と言われそうだ。
だから自分が代わりにやると言ったのだが、シャノンはきっぱりと断った。
(意志の強いところも、素敵だ……)
エルドレッドとしては頼ってほしかったのだが、慣れない土地でも自分にできることをしようとたくましく立つシャノンの姿は、それ以上に素敵だった。
なるほど、城中の人間が彼女を愛でるのはただ単に見た目がかわいいだけでなくて、こういう意志の強さやたくましさがあるからなのだと、再認識させられた。
それでも一人で行かせるのが不安なので何だかんだ言い訳をすると、同行することを許してもらえた。
(これは実質、デートなのでは? 一緒に薪を運ぶデート……薪デート……)
語呂が悪すぎるどころかエリサベト辺りが聞いたら「ダッサ!」と言いそうだが、構わない。
おそらく薪デートなんてするのは世界でエルドレッドとシャノンだけだろうから、何も問題ない。ここが発祥の地である。
そういうことで、シャノンの健気でたくましい姿を見られてエルドレッドはそれだけで十分胸がいっぱいだったのだが。
彼らが帰ってくるまでシャノンは休憩室の中を行ったり来たりしながらやきもきしており、全身雪まみれのディエゴやラウハたちが誰一人欠けることなく帰ってきたと知るとほっとして、嬉しそうな顔で暖炉に薪を足していた……とエルドレッドに教えてくれたのは、その場に居合わせていたという騎士見習いである。
その騎士見習いはかつて、シャノンに片想いしていた。
その噂を聞きつけたエルドレッドが彼を呼び出して膝を突き合わせ一時間ほど話した結果、彼はシャノンに片想いする少年からただのファンになっただけでなく、シャノンの様子をエルドレッドに教えてくれる係になってくれた。
ゴードンは「大人げない……」、ディエゴは「若者を脅さないでください」と言ってきたが、とんでもない。
エルドレッドはただ、自分もまたシャノンに恋をしていることや、どれくらい彼女のことを恋しく思っているかなどについて話して少年に納得してもらい、「それじゃあ僕が、お二人の恋の架け橋になります!」と自ら言ってもらったのだ。
(今日も、シャノンと一緒に行動できてよかった……)
積雪期のユキオオカミの行動についての記録を書きつつも、エルドレッドはにやにや笑うのを止められない。ともすれば記録に間違って「シャノンはかわいい」と書きそうだが、その辺りはしっかりしているのがエルドレッドという男である。
シャノンが薪置き場の鍵を借りたらしい、という話を聞いたエルドレッドはすぐさま薪置き場に向かった。報告書が途中になっていたが、明日までに仕上げればいいものだから大丈夫だ、と己に言い訳した上で。
案の定シャノンは、騎士たちのために薪を運ぼうとしていた。
どんと積まれた無骨な薪の前に立つ、春の妖精。
絵に……はならない光景だが、ギャップは感じられたのでそれはそれで大変よかった。
だが、かわいらしい制服を着たかわいらしいシャノンが薪を運ぶなんて、とんでもない。
万が一怪我をしてはならないし、下手すれば子どもよりも体の小さい彼女が薪を運ぶ姿なんて、微笑ましいどころか「虐待?」と言われそうだ。
だから自分が代わりにやると言ったのだが、シャノンはきっぱりと断った。
(意志の強いところも、素敵だ……)
エルドレッドとしては頼ってほしかったのだが、慣れない土地でも自分にできることをしようとたくましく立つシャノンの姿は、それ以上に素敵だった。
なるほど、城中の人間が彼女を愛でるのはただ単に見た目がかわいいだけでなくて、こういう意志の強さやたくましさがあるからなのだと、再認識させられた。
それでも一人で行かせるのが不安なので何だかんだ言い訳をすると、同行することを許してもらえた。
(これは実質、デートなのでは? 一緒に薪を運ぶデート……薪デート……)
語呂が悪すぎるどころかエリサベト辺りが聞いたら「ダッサ!」と言いそうだが、構わない。
おそらく薪デートなんてするのは世界でエルドレッドとシャノンだけだろうから、何も問題ない。ここが発祥の地である。
そういうことで、シャノンの健気でたくましい姿を見られてエルドレッドはそれだけで十分胸がいっぱいだったのだが。