捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
エルドレッドは結婚がまだで子どももいないという、シャノンの発言。
それを受けてエルドレッドが、恋をするような眼差しで言った「それはもしかしなくても」の発言。
いきなり突っ込んだディエゴ。「邪魔をするな」というエルドレッドの怒ったような声。
もしかして。
エルドレッドが言いたかったのは、
『それはもしかしなくても、シャノンが結婚してくれるのか』
みたいな言葉だったり――
「っきゃーーーーー!?」
転がる勢いで柱の陰から飛び出し、シャノンは悲鳴を上げてダンダンと床を拳で殴りつけた。
(わわわ私、なんて、なんてことを想像して……!)
床を叩くだけでは物足りなくて、床に額を打ち付けながらシャノンは激しく後悔する。
いくら、先ほどの男性とエルドレッドの表情が似ているからといって。
エルドレッドが思わせぶりなことを言うからといって。
(こんなっ、こんなはしたない妄想をするなんて……!)
打ち付けてじんじんする額を冷たい床にくっつけながら、シャノンはうううう、とうめいた。
エルドレッドは確かに、シャノンに優しい。周りの人たちも総じてシャノンには甘いが、エルドレッドはいっとう甘い気ががする。
そして、今気づいたばかりではあるが先ほどの休憩室ではそういう雰囲気になっていたようにも思われる。
だが、だからといって自分とエルドレッドが結婚する想像をするなんて、妄想も甚だしい痛い女だ。
あのときエルドレッドが何を言おうとしたかなんて、分かりっこない。
それなのに、こんなに都合のいい想像をしてしまうなんて、自分が恥ずかしくなってきて――
(……ん? 「自分に都合のいい」……?)
床から顔を上げたシャノンは、はっと気づいた。気づいてしまった。
もしかしたら先ほど、エルドレッドはシャノンとの結婚について考えたのかもしれない。
……そんな想像をしてシャノンは嫌だと思うどころか、「自分に都合のいい」想像だと思った。
それはつまり……。
「私、閣下のこと……好きなの……?」
へたり、とその場に座り込んでしまったシャノンは、呆然とつぶやく。
シャノンはエルドレッドのことが好きだから、彼の思わせぶりな発言から結婚のことを想像しても嫌だとは思わなかった。
エルドレッドに話しかけられることが、心配されることが、気にかけてもらえることが……嬉しいとさえ感じていた。
「そんなぁ……」
先ほどまで自分の身を隠していた柱に寄りかかり、シャノンは力なく天井を見上げる。
そんな馬鹿な、こんなはずでは、と思いながらも。
かつて婚約者がいた頃にさえ一度も経験することのなかった胸のときめきを、シャノンははっきりと感じていたのだった。
それを受けてエルドレッドが、恋をするような眼差しで言った「それはもしかしなくても」の発言。
いきなり突っ込んだディエゴ。「邪魔をするな」というエルドレッドの怒ったような声。
もしかして。
エルドレッドが言いたかったのは、
『それはもしかしなくても、シャノンが結婚してくれるのか』
みたいな言葉だったり――
「っきゃーーーーー!?」
転がる勢いで柱の陰から飛び出し、シャノンは悲鳴を上げてダンダンと床を拳で殴りつけた。
(わわわ私、なんて、なんてことを想像して……!)
床を叩くだけでは物足りなくて、床に額を打ち付けながらシャノンは激しく後悔する。
いくら、先ほどの男性とエルドレッドの表情が似ているからといって。
エルドレッドが思わせぶりなことを言うからといって。
(こんなっ、こんなはしたない妄想をするなんて……!)
打ち付けてじんじんする額を冷たい床にくっつけながら、シャノンはうううう、とうめいた。
エルドレッドは確かに、シャノンに優しい。周りの人たちも総じてシャノンには甘いが、エルドレッドはいっとう甘い気ががする。
そして、今気づいたばかりではあるが先ほどの休憩室ではそういう雰囲気になっていたようにも思われる。
だが、だからといって自分とエルドレッドが結婚する想像をするなんて、妄想も甚だしい痛い女だ。
あのときエルドレッドが何を言おうとしたかなんて、分かりっこない。
それなのに、こんなに都合のいい想像をしてしまうなんて、自分が恥ずかしくなってきて――
(……ん? 「自分に都合のいい」……?)
床から顔を上げたシャノンは、はっと気づいた。気づいてしまった。
もしかしたら先ほど、エルドレッドはシャノンとの結婚について考えたのかもしれない。
……そんな想像をしてシャノンは嫌だと思うどころか、「自分に都合のいい」想像だと思った。
それはつまり……。
「私、閣下のこと……好きなの……?」
へたり、とその場に座り込んでしまったシャノンは、呆然とつぶやく。
シャノンはエルドレッドのことが好きだから、彼の思わせぶりな発言から結婚のことを想像しても嫌だとは思わなかった。
エルドレッドに話しかけられることが、心配されることが、気にかけてもらえることが……嬉しいとさえ感じていた。
「そんなぁ……」
先ほどまで自分の身を隠していた柱に寄りかかり、シャノンは力なく天井を見上げる。
そんな馬鹿な、こんなはずでは、と思いながらも。
かつて婚約者がいた頃にさえ一度も経験することのなかった胸のときめきを、シャノンははっきりと感じていたのだった。