捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
「そなた、北方騎士団について何か知っているのか?」
「ああ! 山のところで会ったんだ!」
「何か……あったのですか!?」
思わずシャノンが問うと、男はきょとんとした様子でこちらを見てきた。
なるほど、この寒空でよくここまで来られたと思うほどの薄着で、髪も髭も伸び放題なので山賊のような見た目になっている。
「お嬢ちゃん……あんたは?」
「私は、北方騎士団付事務官です。騎士団の皆について、何かご存じなのですか? 皆は、無事ですか!?」
幼女扱いされたのは気になったが、今はそれはどうでもいい。
シャノンが問うと男は瞬きし、「そうか」とつぶやいた。
「お嬢ちゃんが、北方騎士団の事務官……」
「そうですが……」
それよりもエルドレッドたちの情報を……と思い、身を乗り出したのがまずかった。
空腹で今にも倒れそうな雰囲気だった男が、驚くべき俊敏さを発揮して飛び出した。
彼は剣を持っていた門番を殴り倒してその手から剣を奪い、それを逆手に持ってもう片方の腕でシャノンの首を掴んでその場に押し倒した。
(なっ……!?)
抵抗する間もなく、どさっ、とシャノンは雪の上に倒れる。下が地面だったら後頭部を打ち付けていたかもしれないが、雪がクッションになってくれた。
だが今、シャノンの首を押さえた男によって雪に押し倒されており、その喉元に門番から強奪した剣の先が当てられた。
「はは……! そうか、そうか。おまえも騎士団員ということか!」
「うっ……」
「貴様っ……! シャノンさんから離れろ!」
「……俺の後ろにいる、兄ちゃん。あんた、背後から襲えると思っているだろう? やめとけ。そうすると、俺の剣がお嬢ちゃんの喉に突き刺さるぞ」
ひび割れた声で男が言うが、脅しではない。現に彼が構える剣の刃の先は既にシャノンの喉の皮膚に食い込んでいて、チリチリとした痛みが走っているのだから。
この男が少しでも身を動かせば……周りの門番たちが男を動かすようなことがあれば、シャノンの喉に刃が突き刺さってしまう。
それはシャノンも同じで、喉を押さえつけられて苦しいだけでなくて、下手に抵抗すればこの刃が自分の喉を引き裂くかもしれないと思うと、身じろぎもできない。
は、は、と短く息を吐きながら、体が震えないように必死に身を固まらせることしかできない。
(なんで、こんなことに……?)
「……あなたは、北方騎士団を恨んでいるのですか?」
少しでも男の気をそらそうと思って裏返った声で問うと、男は「ああ、そうだよ!」と怒鳴った。
「あいつらのせいで、俺たちの計画は失敗した! 仲間の半分は雪山で死んで、残りは騎士団どもに捕まった! なぁにが、人とユキオオカミの共存だ! ケチくせぇことを言わず、毛皮の一枚くらい見逃せばいいだろう!」
(毛皮の……?)
男の発言で、シャノンはぴんときた。
「まさかあなたは、密猟者……!?」
シャノンのつぶやきに男は答えなかったが、不快そうに眉根を寄せる様が肯定を示しているようだった。
「ああ! 山のところで会ったんだ!」
「何か……あったのですか!?」
思わずシャノンが問うと、男はきょとんとした様子でこちらを見てきた。
なるほど、この寒空でよくここまで来られたと思うほどの薄着で、髪も髭も伸び放題なので山賊のような見た目になっている。
「お嬢ちゃん……あんたは?」
「私は、北方騎士団付事務官です。騎士団の皆について、何かご存じなのですか? 皆は、無事ですか!?」
幼女扱いされたのは気になったが、今はそれはどうでもいい。
シャノンが問うと男は瞬きし、「そうか」とつぶやいた。
「お嬢ちゃんが、北方騎士団の事務官……」
「そうですが……」
それよりもエルドレッドたちの情報を……と思い、身を乗り出したのがまずかった。
空腹で今にも倒れそうな雰囲気だった男が、驚くべき俊敏さを発揮して飛び出した。
彼は剣を持っていた門番を殴り倒してその手から剣を奪い、それを逆手に持ってもう片方の腕でシャノンの首を掴んでその場に押し倒した。
(なっ……!?)
抵抗する間もなく、どさっ、とシャノンは雪の上に倒れる。下が地面だったら後頭部を打ち付けていたかもしれないが、雪がクッションになってくれた。
だが今、シャノンの首を押さえた男によって雪に押し倒されており、その喉元に門番から強奪した剣の先が当てられた。
「はは……! そうか、そうか。おまえも騎士団員ということか!」
「うっ……」
「貴様っ……! シャノンさんから離れろ!」
「……俺の後ろにいる、兄ちゃん。あんた、背後から襲えると思っているだろう? やめとけ。そうすると、俺の剣がお嬢ちゃんの喉に突き刺さるぞ」
ひび割れた声で男が言うが、脅しではない。現に彼が構える剣の刃の先は既にシャノンの喉の皮膚に食い込んでいて、チリチリとした痛みが走っているのだから。
この男が少しでも身を動かせば……周りの門番たちが男を動かすようなことがあれば、シャノンの喉に刃が突き刺さってしまう。
それはシャノンも同じで、喉を押さえつけられて苦しいだけでなくて、下手に抵抗すればこの刃が自分の喉を引き裂くかもしれないと思うと、身じろぎもできない。
は、は、と短く息を吐きながら、体が震えないように必死に身を固まらせることしかできない。
(なんで、こんなことに……?)
「……あなたは、北方騎士団を恨んでいるのですか?」
少しでも男の気をそらそうと思って裏返った声で問うと、男は「ああ、そうだよ!」と怒鳴った。
「あいつらのせいで、俺たちの計画は失敗した! 仲間の半分は雪山で死んで、残りは騎士団どもに捕まった! なぁにが、人とユキオオカミの共存だ! ケチくせぇことを言わず、毛皮の一枚くらい見逃せばいいだろう!」
(毛皮の……?)
男の発言で、シャノンはぴんときた。
「まさかあなたは、密猟者……!?」
シャノンのつぶやきに男は答えなかったが、不快そうに眉根を寄せる様が肯定を示しているようだった。