捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
『壁令嬢』、家を出る
ジャイルズは「シャノンに恥を掻かされた」と言い、彼の父も「ただでさえ大柄で見栄えがしないのに、横暴なことをする女性を嫁にすることはできない」と言って、婚約破棄を申し出てきた。
これを聞いたシャノンの両親は怒り狂い、「せっかく結んでやった縁を、よくも!」とシャノンを責めた。
姉のダフニーは「私がもっとちゃんと、シャノンを教育してあげていれば……」としおらしく涙を流して両親の同情を誘い、妹のオリアーナは「シャノンお姉様は馬鹿だから、仕方ないわね!」と笑った。
どちらも非常にウザかった。
婚約破棄になっただけでなく、男爵家への融資が白紙になったというのも両親にとっては痛手だったようだ。
「おまえがおとなしく嫁いでいれば、数年もすれば元手が倍になって返ってくるはずだったのに!」
「せっかく、二十年以上も育ててやったというのに!」
どうやら両親は、シャノンをマート家に嫁がせる際に提供した金が大金になって返ってくると踏んだ上で、マート家への融資を提案したらしい。
娘の持参金なんて甲斐性のあることをする人たちではないとは思っていたが、やはり最初からシャノンを利用して金を稼ぐ予定だったようだ。
既に姉は名門伯爵家の次男を婿に迎えることが決まっており、妹もたくさんの恋人の中からそろそろ本命を見つけるべきかと思っている頃。
そんな今、二十一歳にして婚約者なしになってしまったシャノンを、家族が丁重に扱ってくれるはずもない。
「出て行け! おまえのような醜女をこれ以上養うつもりはない!」
つばをまき散らしながら父が叫ぶと、さしもの母もぎょっとしたようだ。
「あなた! でもシャノンにも、まだ嫁ぎ先が……」
「私がもう、こいつの顔を見たくない! 自分の娘だとも思いたくない! 私の娘は愛らしいダフニーとオリアーナだけで十分だ!」
それまでは母と同じく突然の勘当命令に驚いていた姉と妹も、父に褒められたからか一気に態度を変え、「そうよね」「私たち二人だけで、十分だわ!」と手のひらを返した。
母は勘当までは……とは思っていたようだが、父の圧力とダフニーとオリアーナの「私たちも、シャノンが家族だなんて恥ずかしいわ!」「お母様、どうかご英断を!」というすがるような言葉に絆されたようで、やがて厳しい表情でうなずいた。
「……そうね。きっと、あなたのような子を産んだのが、間違いだったのよ」
「お母様……」
「出て行って。……私の娘はもう、ダフニーとオリアーナだけで十分だわ」
母は冷えきった声で言い、シャノンに背を向けた。
母に背を向けられて言葉を失うシャノンを、ダフニーが哀れむような眼差しで――だが口元は笑っている――、オリアーナが隠そうともせずけらけらと笑いながら、見ていた。
これを聞いたシャノンの両親は怒り狂い、「せっかく結んでやった縁を、よくも!」とシャノンを責めた。
姉のダフニーは「私がもっとちゃんと、シャノンを教育してあげていれば……」としおらしく涙を流して両親の同情を誘い、妹のオリアーナは「シャノンお姉様は馬鹿だから、仕方ないわね!」と笑った。
どちらも非常にウザかった。
婚約破棄になっただけでなく、男爵家への融資が白紙になったというのも両親にとっては痛手だったようだ。
「おまえがおとなしく嫁いでいれば、数年もすれば元手が倍になって返ってくるはずだったのに!」
「せっかく、二十年以上も育ててやったというのに!」
どうやら両親は、シャノンをマート家に嫁がせる際に提供した金が大金になって返ってくると踏んだ上で、マート家への融資を提案したらしい。
娘の持参金なんて甲斐性のあることをする人たちではないとは思っていたが、やはり最初からシャノンを利用して金を稼ぐ予定だったようだ。
既に姉は名門伯爵家の次男を婿に迎えることが決まっており、妹もたくさんの恋人の中からそろそろ本命を見つけるべきかと思っている頃。
そんな今、二十一歳にして婚約者なしになってしまったシャノンを、家族が丁重に扱ってくれるはずもない。
「出て行け! おまえのような醜女をこれ以上養うつもりはない!」
つばをまき散らしながら父が叫ぶと、さしもの母もぎょっとしたようだ。
「あなた! でもシャノンにも、まだ嫁ぎ先が……」
「私がもう、こいつの顔を見たくない! 自分の娘だとも思いたくない! 私の娘は愛らしいダフニーとオリアーナだけで十分だ!」
それまでは母と同じく突然の勘当命令に驚いていた姉と妹も、父に褒められたからか一気に態度を変え、「そうよね」「私たち二人だけで、十分だわ!」と手のひらを返した。
母は勘当までは……とは思っていたようだが、父の圧力とダフニーとオリアーナの「私たちも、シャノンが家族だなんて恥ずかしいわ!」「お母様、どうかご英断を!」というすがるような言葉に絆されたようで、やがて厳しい表情でうなずいた。
「……そうね。きっと、あなたのような子を産んだのが、間違いだったのよ」
「お母様……」
「出て行って。……私の娘はもう、ダフニーとオリアーナだけで十分だわ」
母は冷えきった声で言い、シャノンに背を向けた。
母に背を向けられて言葉を失うシャノンを、ダフニーが哀れむような眼差しで――だが口元は笑っている――、オリアーナが隠そうともせずけらけらと笑いながら、見ていた。