捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
国王主催のパーティーで、シャノンはエルドレッドから贈られたドレスに袖を通した。
婚約してから、エルドレッドはシャノンにこれでもかというほどの贈り物をしてくれる。
ドレスや靴、髪飾りなどの服飾品はもちろんのこと、花が育ちにくい雪国でもめげずに花を買い求めてくれるし、化粧品や家具など、もう十分だと思うほどの量のものを贈ってくれた。
今回王都に持ってきたドレスもエルドレッドが用意したもので、それを纏ったシャノンを見た彼は、ほうっと息を吐き出した。
「シャノン……とてもきれいだ」
「ありがとうございます、エルドレッド様。……こういうドレス、あまり着たことがないので嬉しいです」
「あなたのきれいな肩の形と背中がよく見えて、素敵だよ」
エルドレッドはそう言って、露わになっているシャノンの背中に唇を落とした。
普段彼が贈ってくれるドレスは、基本的にどれも雪国仕様だ。生地は厚めで、首元から手首まですっぽり覆うデザインにすることで冷気が入り込むのを避ける。そんなドレスに合うように、髪はまとめて毛皮でできた帽子を被ることが多い。
だが今回の舞台は王都なので、今王国で流行っているデザインをふんだんに取り入れた。
スカートラインはストレートだがお尻の部分を膨らませて、ボリュームを持たせる。裾にはレースをたっぷりあしらっており、そして胸元や背中を大胆に開けるというのが今の流行らしい。
昔だったら、どんなに流行っていたとしてもシャノンがこういうデザインのものを着ることはなかった。
ふくよかな姉やスレンダーな妹なら胸や背中のラインを美しく見せられるが、シャノンだと肩幅の広さが目立ってしまい『壁令嬢』のあだ名をほしいままにしてしまうからだ。
(正直なところ、これを着るまではちょっとだけ怖かったわ)
胸と背中が大胆にカットされたデザインは、昔の自分のコンプレックスを刺激してくる。
だが、エルドレッドが贈ってくれたものであり――コンプレックスを打破したいと思うから、シャノンはこれを身に纏った。
そして、エルドレッドは大袈裟なほどシャノンを褒めてくれた。男のように広くて不格好だと言われた肩を「きれい」と言い、骨の大きさが目立つ背中にキスをしてくれる。
(……もう、大丈夫だわ)
壁と罵られ心の中で泣いていたシャノンは、もうどこにもいない。
エルドレッドが愛でてくれるこの体を、シャノンも愛することができるから。
「……私、あなたに見初めてもらえて本当に幸せです」
シャノンが正直な気持ちを吐露するとエルドレッドは小さく笑い、シャノンを自分の方に向かせてからそっとキスした。
「それは私の台詞だ。こんなに可憐で愛らしい天使を私だけの人にできるなんて、どれほど神に感謝しても足りないくらいだ」
「エルドレッド様……」
「だが……このきれいな背中が不特定多数の者に見られるのは、なんだか嫌だな。これを着けなさい」
そう言ってエルドレッドがメイドから受け取ったのは、薄手のショール。
北の国に古くから伝わる文様が刺繍された純白のレースショールをふわりとシャノンの肩にかけて、背中や肩のラインが見えにくくする。
「うん、これでいい。……その背中で魅了するのは、私だけにしてくれ」
「私の背中で魅了できる人はあなたくらいだから、大丈夫だと思います」
「あなたは未だに、自分の魅力を分かっていないな。……まあ、領地に帰るとこのドレスを着ることはないし、堪能できるのは私一人だからいいか……」
エルドレッドがぶつぶつ言うので、こら、と彼の背中を軽く叩く。
筋肉質で大柄な彼なのでシャノンの一撃くらいなんともなさそうだし、逆に嬉しそうだった。
婚約してから、エルドレッドはシャノンにこれでもかというほどの贈り物をしてくれる。
ドレスや靴、髪飾りなどの服飾品はもちろんのこと、花が育ちにくい雪国でもめげずに花を買い求めてくれるし、化粧品や家具など、もう十分だと思うほどの量のものを贈ってくれた。
今回王都に持ってきたドレスもエルドレッドが用意したもので、それを纏ったシャノンを見た彼は、ほうっと息を吐き出した。
「シャノン……とてもきれいだ」
「ありがとうございます、エルドレッド様。……こういうドレス、あまり着たことがないので嬉しいです」
「あなたのきれいな肩の形と背中がよく見えて、素敵だよ」
エルドレッドはそう言って、露わになっているシャノンの背中に唇を落とした。
普段彼が贈ってくれるドレスは、基本的にどれも雪国仕様だ。生地は厚めで、首元から手首まですっぽり覆うデザインにすることで冷気が入り込むのを避ける。そんなドレスに合うように、髪はまとめて毛皮でできた帽子を被ることが多い。
だが今回の舞台は王都なので、今王国で流行っているデザインをふんだんに取り入れた。
スカートラインはストレートだがお尻の部分を膨らませて、ボリュームを持たせる。裾にはレースをたっぷりあしらっており、そして胸元や背中を大胆に開けるというのが今の流行らしい。
昔だったら、どんなに流行っていたとしてもシャノンがこういうデザインのものを着ることはなかった。
ふくよかな姉やスレンダーな妹なら胸や背中のラインを美しく見せられるが、シャノンだと肩幅の広さが目立ってしまい『壁令嬢』のあだ名をほしいままにしてしまうからだ。
(正直なところ、これを着るまではちょっとだけ怖かったわ)
胸と背中が大胆にカットされたデザインは、昔の自分のコンプレックスを刺激してくる。
だが、エルドレッドが贈ってくれたものであり――コンプレックスを打破したいと思うから、シャノンはこれを身に纏った。
そして、エルドレッドは大袈裟なほどシャノンを褒めてくれた。男のように広くて不格好だと言われた肩を「きれい」と言い、骨の大きさが目立つ背中にキスをしてくれる。
(……もう、大丈夫だわ)
壁と罵られ心の中で泣いていたシャノンは、もうどこにもいない。
エルドレッドが愛でてくれるこの体を、シャノンも愛することができるから。
「……私、あなたに見初めてもらえて本当に幸せです」
シャノンが正直な気持ちを吐露するとエルドレッドは小さく笑い、シャノンを自分の方に向かせてからそっとキスした。
「それは私の台詞だ。こんなに可憐で愛らしい天使を私だけの人にできるなんて、どれほど神に感謝しても足りないくらいだ」
「エルドレッド様……」
「だが……このきれいな背中が不特定多数の者に見られるのは、なんだか嫌だな。これを着けなさい」
そう言ってエルドレッドがメイドから受け取ったのは、薄手のショール。
北の国に古くから伝わる文様が刺繍された純白のレースショールをふわりとシャノンの肩にかけて、背中や肩のラインが見えにくくする。
「うん、これでいい。……その背中で魅了するのは、私だけにしてくれ」
「私の背中で魅了できる人はあなたくらいだから、大丈夫だと思います」
「あなたは未だに、自分の魅力を分かっていないな。……まあ、領地に帰るとこのドレスを着ることはないし、堪能できるのは私一人だからいいか……」
エルドレッドがぶつぶつ言うので、こら、と彼の背中を軽く叩く。
筋肉質で大柄な彼なのでシャノンの一撃くらいなんともなさそうだし、逆に嬉しそうだった。