捨てられた『壁令嬢』、北方騎士団の癒やし担当になる
 シャノンたちはその後すぐに会場を離れたので、これ以降はあくまでも噂の範疇だが。

 シャノンを利用しようとした父は「娘を勘当したくせに、手のひらを返した恥知らず」と社交界での笑いものになったという。せめてあの場で、勘当したことを謝るくらいのことをすれば、未来は違ったかもしれないのに。

 そしてそろそろ結婚している時期なのではとシャノンも思った姉のダフニーはなんと、婚約者とは結婚できなかったそうだ。
 その理由はいろいろ噂されているが最も有力なものは、姉の悲劇のヒロインぶり体質にほとほと呆れた相手の男が浮気相手と一緒に逃げたから、というものだった。
 真偽のほどは分からないし、シャノンにとってもどうでもよかった。

 そして妹のオリアーナはあれでなかなか図太いので、今もあちこちの男性にアプローチをかけているそうだ。
 したたかで計算高いので恋人が絶えることはないが、その恋人の数もだんだん減り、しかも相手も高齢化して最近は中年男性と一緒にいる姿をよく見かけるとか、見かけないとか。

 母がどうしているのか、シャノンは長く知ることはなかった。だがもっと長い時間が流れて、「ウィンバリー子爵夫妻が離婚したらしい」ということを聞いた。
 その後の母がどこで何をしているのか、シャノンが知ることはなかった。
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