狂気のお姫様
「いきなり別れるなんて言い出して、すぐに他の女に告白するなんてどういうこと!!!」

いきなり浅田くんの後ろから、ギャル女が出てきて浅田くんに噛み付く。

「…エミ」

「あたし納得してない!!」


思いがけない修羅場に、頭がついていかない。
まぁつまり、彼女をフってすぐに私に告白してきたとんでもない男だということは分かった。


「小田、目をキラキラさせるな」

「生修羅場だよ」


あぁ、また面倒なことになった。
周りにはまだ人が残っていて、野次馬へと化している。帰れ。


男と女のリアル修羅場をボーッと鑑賞していると、

「アンタが誘惑したんでしょ!!!!」

浅田くんと言い合ってた女が、いきなり私に矛先を向けた。

「はい?」

「アンタのせいでこうなったのよ!!」

「いや私その人と話したこともないんですが」

「確かに」


小田もこれには同調。

「そうとしか考えられない!!」

喚き続ける女を浅田くんはなだめるが、それも頼りない。

「エミ、やめろよ。東堂さんに迷惑かけるな」

いやお前がそもそもの原因だろうが。


「なによ…!!みんな東堂東堂って!!!」

私の知ったこっちゃないよそんなこと。


これ、どう収拾つけようか、と小田の方を向くと、小田も飽きた様子。そういえばコンビニ行きたいって言ってたからな。はやく退散したいんだろう。

誰か助けてくれ~、と思いながら徐に天井を仰ぎ見ると、

「エミちゃんっ大丈夫?」

と、声がした。



「出た」

ボソッと呟いた小田に、ハテナマークを浮かべつつも声のした方を向くと、そこにはハニーピンクの髪をした可愛らしい女の子。


「なに?出たって」

他の人に聞こえないように小田をチラリと見ると、同じように小声で話す。

「鹿島杏奈。超天然、の皮をかぶってるクソ野郎。アンタが昼話してた奴だよ」

「…鹿島」


あの子が鹿島。

小田がクソ野郎って言うくらいだから、まじで性格が悪いんだろう。

「まぁ、みんなは天然の皮かぶってるって知らないからチヤホヤするんだけどね」

「へぇ」

見ると、エミって子は鹿島さんに抱きついて泣きじゃくり、浅田くんは鹿島さんを見て少し頬を赤くしている。周りも、なんとなく鹿島さんに好意的だ。

「なんで小田は皮かぶってるって知ってんの」

「あぁ中学一緒で。自分より可愛い子を悪者に仕立てあげて周りに虐めさせてたの。まぁ、あの感じだし、被害者や周りの人たちしか奴の本性は分からないんだよね」

そりゃとんでもない悪者姫様だな。これで確信した。今日のお昼のことは仕組まれてたってこと。まぁ顔は勝ってると思うし。話してもないのに敵認定されちゃったわけ、ね。

「…くるよ」

ボソリと小田が呟く。

鹿島杏奈の目に私がうつった。さて、何を言われるのやら。
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