狂気のお姫様

「なんでしょうか」

この人とは今日の昼会ったけど、陽ちゃんの後ろでもう1人の男の人といて全く話してないからどんな人か分からない。だから、女でもめっためたのボッコボコにする極悪非道のやつかもしれないのだ。

できるだけ機嫌を損ねないように笑みを浮かべる。


「お前、昼のやつ」

「あ、はい、どうも奇遇ですね」

「陽介の」

「です」


単語単語で話すから返事がしにくいが、ニュアンスで感じ取って答える。なんの用だよ~~。

小田はまだ諦めていないのか、私の手を離そうと必死だ。逃がすか。死なば諸共だ。


「アイス…」

「はい?」

「アイスどれがいいと思う」

「はい?」


一度頭で考え直す。『アイスどれがいいと思う』って言ったよな。うん言ったな。言ったわ。

1回小田の顔を見る。うん、小田も私と同じ顔してる。


「えーと、アイスを選ぶんですか?」

「あぁ。ここのコンビニ来たのはじめてだから」


もう一度小田の顔を見る。

「…」

「…」



うん、この人は害ないわ!!!!!!!!


3人で仲良くアイスコーナーへ移動。そこには色彩豊かなたくさんのアイスたち。

「なんか嫌いなものとかあります?」

「ピーマン」

「そうですか」

うん、ツッコミはやめよう。つまりアイスで嫌いなものはない、ということでオッケーだな。おい小田、笑うのやめろよ。まじで。


「あ、私これオススメですねー、まるごとマンゴー」

「まるごとマンゴー…。マンゴー食べたことない」

「あー…」


じゃあ最初からマンゴーはハードル高いか、って何真面目に考えてんだ私。

「じゃあ先輩、マンゴー食べたことないなら、まずこのシャキシャキマンゴーアイス買って食べてみてから、気に入ったらまるごとマンゴー食べてみたらどうですか」

「おぉ…」

すごい小田、小田すごい。将来営業向いてるよ。そして長谷川蓮に害がないと分かってからの手のひらの返しようがすごいよ。


「なるほど」


長谷川蓮も真剣に小田の声に耳を傾け頷く。余程アイスが好きなようだな。


「そうする」

「あ、はい」


アイスひとつでそんな決意に満ちた顔せんでええがな、と思いつつ、まぁ決まったのなら良かったね、という感じだ。

そして私もスイーツを手にし、またもや3人仲良くレジへGO。

会計が終わったあとは、長谷川蓮にバイバイをして小田とまた2人で帰路についた。
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