狂気のお姫様
「…」
「…」
「やばくない!?」
「うぉ、びっくりした」
精神すり減ったな~、と思いながらため息をつくと、いきなり小田が声をあげる。
「長谷川さんと話しちゃったじゃん」
「やばいね。私もびっくりした」
「なんか可愛かったね」
「だねー。最初はメッタメタにボコられるかと思ったけど」
「同じく」
「でも昼には一言も話してないんだよ」
「如月さんと話してたから大丈夫だって思ったんじゃない?それかアンタが頭おかしいから自分に害はないって思ったか」
「誰が頭おかしいだ」
全く失礼なこと言いやがる。そりゃ鬼畜なことを思いつくのは得意だが、それとこれとは別なのだ。
「でも結構フレンドリーだよね。純粋そうだし。なんか人に騙されてそうだけど」
「あー、確かに。詐欺とかあってそう」
ケラケラ2人で笑いながら、陽ちゃんと長谷川蓮以外の3人についても聞く。
「鳴さんて人がいたな」
「あー、四ツ谷鳴(よつやめい)さんね。ホストみたいな人でしょ?女たらしの」
「あー、そんな顔してた」
「あと、他は佐々木夕(ささきゆう)さん。可愛い感じの」
「あー、話したわ。私に彼氏できたらその彼氏もやばいよなって言われたわ」
「ぶふっ!いやそれは否めないじゃん!てかそこまで話したの」
「まぁね。あと1人は?」
「羽賀愁(はがしゅう)さん。この人はまじで怖いって噂だよ」
「確かに怖そうなイメージだった。髪の毛銀だし」
「まぁ私は顔と名前が一致するくらいだから、性格がどうとかは分かんないけど」
「貴重な情報あざす」
「別に私に聞かなくても如月さんに聞けばいいじゃん」
「わざわざ陽ちゃんとそんな話しないよ怖い」
「それもそうか」
「もしなんかあったら小田も巻き込んでやる」
「登校拒否だな」
まぁでも、やっぱり陽ちゃんと仲良い時点で私への妬みは消えない、どころか生まれていくだろうな。
学校で陽ちゃんが話しかけてこないことを祈るしかない。天は全員2年だ。教室の階も違うし、普段なら屋上付近やその階段にも近づかないし、用がないなら大丈夫だろう。
面倒なことになるなよ~と思いつつ、それに打ち勝つ自信はある。
自分至上主義な私が負けるわけないでしょ。