狂気のお姫様
「陽ちゃーん、学校一緒に行かないかんね」

「はー、なんでだよ。女に妬まれるからか」

「分かってんじゃねぇか」

「別にお前ならどうってことねぇだろうがよー」

「それで仕返しして怒るの陽ちゃんじゃん」

「それはやりすぎだからだ」


ベッドの中でさも当然のように言い放つ陽ちゃん。うざいことこの上無し。


「そういえばこないだまたなんか問題があったようだな」

「ん?」

「蓮の弟がお前見たって。あ、こないだ一緒にいたやつの弟な。1年にいんだよ」

「私を?」

「おー。なんか修羅場ってたって」

「あー、アレね」

「一部始終聞いたけど、お前やっぱ妬まれ体質だな」

「マミーが可愛く産んでくれたかんね」

「うざいけどそれは否めんな。あの親から生まれるなら納得だわ」


そうなのだ。ウチの両親ともに容姿が抜群にいい。つまりこの親にこの子あり、という感じがモロに出ているのだ。妬むならウチの親を妬め。


「そういえば、その鹿島杏奈が屋上来てよ」

「え、まじ?」

「まじ」

「どんだけ天然演じれば気がすむの。命知らずだなぁ」


鹿島杏奈、やっぱりバカだわ。なんでそんな危険なことをしてまで自分を売り込みたいのかが分からない。優越感に浸りたいのか?ボロボロにならなかっただけマシと思えばいいが、自分が特別だからとか思ってそう。


「あ、やっぱあれ演技なわけ?」

「らしいよ、小田が言ってた」

「小田?」

「私の友達、らしきもの」


私の友達らしきもの発言に「ん?」と首を傾げるも、小田はそういう存在なのだ。友達とも安易に言い難い。いや友達だけども。友達らしきもの、なのだ。


「小田が中学一緒らしくて、その頃からあんなんだって」

「へぇ」

「それより陽ちゃん騙されなかったんだね」

「いや信じるか信じないかじゃなくて、ただ警戒したな」

「ほぉ、さすが」


陽ちゃんがアレを信じてたらまじで気分を害すどころじゃないよ。株がガタ落ちだよ。


「でも愁がソイツに名前聞いてよ」

「あー、あの怖い人。なんで?」

「愁は適当に聞いて満足させたら帰るだろと思ったって言ってたけど」

「鹿島杏奈は自分が気に入られたって勘違いしたかもって?」

「そ」

「すごいおめでたい頭してるねそうだとしたら」

「愁あいつ鬼畜だからな。まぁ、本当は鹿島杏奈を気に入ったのかもしんねぇけど。面白いから鹿島杏奈の性格あいつらに黙っとこ」


鬼畜と聞いて仲間意識が生まれてしまうのは、自分が鬼畜と言われ慣れているせいだろうか……解せぬ。ていうか、面白いと感じてるのアンタだけだよ。大事な友達じゃないの。誑かされてもいいのか。


「ま、お前も気をつけろよー。んでそろそろ学校行くか」

「いや待て。だから一緒に行かないってば!!」

「なんでだよー、寂しいぞ俺は」


とか言いながらニヤニヤしてる陽ちゃん。実に嫌いである。結局この人は、私で遊ぶのだ。あとから小言攻めしてくるくせに。姑が。

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